研究課題/領域番号 |
15K11416
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
横井 彩 岡山大学, 大学病院, 医員 (00612649)
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研究分担者 |
山中 玲子 岡山大学, 大学病院, 助教 (00379760)
森田 学 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40157904)
秦 浩信 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 歯科口腔外科医師 (70450830)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アセトアルデヒド / 舌背上細菌数 / 周術期 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究において、術後一週間目の舌苔付着範囲、舌上細菌数、口腔内アセトアルデヒド濃度に増加がみられた。さらに、術後一週間目の舌圧は統計学的有意に減少を認めた。平成28年度は口腔内アセトアルデヒド濃度に関与する因子として、舌圧の減少と嚥下機能、術後合併症の有無について、比較、検討した。 対象者は52名の癌患者のうち食道癌手術をうけた36名(舌圧訓練未実施群27名、舌圧訓練実施群9名)とした。術前から術後2週までの間で以下の項目について評価した。①嚥下機能(舌圧測定、Repetitive saliva swallowing test (RSST))、②術後誤嚥性肺炎関連因子(発熱日数、胸部X線写真での陰影の有無、血液データ、担当医による肺炎の診断)、③周術期医科データ(年齢、性別、TMN分類手術時間、出血量、反回神経麻痺の有無、挿管期間、絶食期間、ICU滞在期間、入院期間)、④口腔内診査(現在歯数、歯周病重症度、歯垢付着部位)、⑤生活習慣(飲酒・喫煙習慣、歯磨き習慣)。各指標に関して①術後RSST3未満の群とRSST3以上の群で比較、②舌圧訓練群と未実施群で比較した。 舌圧訓練未実施群(27名)のうち、術後RSST3未満であった群は、術後RSST3以上であった群と比較し、統計学的にICU滞在期間が有意に短く、術後舌圧が5kPa以上減少した者の割合が高かった。また、舌圧訓練群(9名)は、術後には舌圧が有意に増加した。一方、嚥下機能、誤嚥性肺炎関連項目において、未実施群との差はみられなかった。 食道癌周術期患者のうち、嚥下機能が低い人は、舌圧が減少していた。また、舌圧訓練は、舌圧減少を予防することができたが、嚥下機能、術後誤嚥性肺炎関連因子への影響はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度、10名の癌患者に加え、平成28年度は42名の癌患者のデータを収集でき、本研究の対象者は52名となった。また、共同研究施設での倫理委員会の承認を得たばかりであり、さらなる対象者の拡大が期待できる。 一方、舌圧訓練群の対象者が9名しか収集できておらず、平成29年度は舌圧訓練群のデータ収集に力を入れる。また、術後一週間後に細菌数と、口腔内アセトアルデヒド濃度の上昇がみられたため、舌苔細菌の解析も必要である。
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今後の研究の推進方策 |
舌圧訓練群のデータ収集に力をいれる。現在、誤嚥性肺炎のリスクが高い患者には、言語聴覚士により、接触嚥下リハビリの介入を受けている。今後、言語聴覚士や理学療法士など、術後のリハビリに関係する職種との連携をはかり、舌圧訓練群のデータ収集につとめる。 また、舌苔細菌の解析には、当大学施設のバイオバンクの施設を利用予定である。次世代シーケンサーによる解析が可能である。倫理委員会での承認もおりており、細菌の解析を行うことで、口腔内アセトアルデヒド産生細菌の同定をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度、舌圧訓練群の対象者が9名と少なかったため、平成28年度予算が残余してしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年年度は協力施設での対象者の増加も期待でき、平成28年度以上のデータ収集に利用する予定である。また次世代シーケンサーには多額の費用がかかり、平成28年度の予算を利用することで、より多くの検体の解析を行う予定である。
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