研究課題/領域番号 |
15K11423
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
秋房 住郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40295861)
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研究分担者 |
有吉 渉 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (40405551)
臼井 通彦 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (10453630)
沖永 敏則 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (60582773)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周疾患 / 最大呼気量 / 血管流路 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
歯周医学の視点に立った実証研究のため、ウシ頸動脈内皮細胞株(HH細胞)でコーティングした新規微小流路チップを用いて、灌流下でマクロファージによるプラック様塊の形成を観察した。 その結果、HH細胞非コーティング群では、マクロファージは付着せず、滑らかに流れた。一方、HH細胞コーティング群では、非感染マクロファージは滑らかに流れたが、歯周病原性細菌感染マクロファージは、ピラー周囲に多く付着し、流路内のHH細胞にも付着が観察された。これらの結果から、同実験系は、歯周疾患と動脈硬化の関連性の分子メカニズムを解析する上で、極めて有効なツールであることが示唆された。 新規の炎症性サイトカインであるIL-33は、動脈硬化への関与が報告されている。今回、IL-33が単球・マクロファージ系に及ぼす作用について、MMP-9に着目して研究を行った。RAW264.7細胞に対して、IL-33を添加し、培養を行ったところ、刺激後の細胞において、MMP-9の遺伝子およびタンパクレベルの発現亢進が観察された。さらに培養上清に対して行ったZymogramの結果、MMP-9酵素活性の増強も確認された。このIL-33によるMMP-9の発現誘導に関わる細胞内シグナルの解析の結果、MMP-9の誘導に ERK-CREB-AP-1経路およびNF-κB経路の関与が示唆された。 高齢者施設で口腔ケアの際に舌に刺激を与えたところ、最大呼気量が増大した。高齢者では咳嗽力と最大呼気量は相関することが知られていることから、舌刺激は咳嗽力の維持向上に寄与するものであり、本研究の結果は、口腔ケアが誤嚥性肺炎を予防することに関する医学的根拠を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周疾患と動脈硬化の関連性の分子メカニズムを解析することを目的に、歯周病原性細菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitans感染マクロファージが血管内でプラークを形成する機序を研究するにあたり、傷ついた微小血管内をピラーにより再現できたことから、有効な研究ツールを開発することができた。 炎症性サイトカインであるIL-33が、単球・マクロファージ系細胞からのMMP-9の発現を亢進させることで、プラークの脆弱化や易破綻性を介して急性冠症候群の発症に関与している可能性について一定の知見を得ることができた。 口腔ケアによる咳嗽力の向上について介入研究を行う高齢者施設との調整が進み、研究を推進する上で有用な研究フィールドをえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
心肺機能を含む高齢者の運動機能を計測するにあたり、掛けることができる負荷について今後決めるが、健康障害が出ないよう、施設側の職員との連携のあり方について今後検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会に直接参加するための旅費が発生しなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
学会に直接参加するための旅費を使用するとともに、実験に要する物品の計画的な購入を行う。
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