研究課題/領域番号 |
15K11426
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
米澤 英雄 杏林大学, 医学部, 講師 (60453528)
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研究分担者 |
茂木 瑞穂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60422474)
大石 敦之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (50645166)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口腔内細菌叢 / バクテリオシン |
研究実績の概要 |
ヒト口腔は、腸管に次いで多くの細菌が常在し、細菌叢を形成している。また口腔は消化管への入り口でもあり、口腔内細菌は唾液と共に消化管へと流入している。口腔細菌にはStreptococcus mutansに代表されるように抗菌物質(バクテリオシン)を産生する細菌が常在している。バクテリオシンは主としてグラム陽性細菌に抗菌活性を示すことから、これらを産生する細菌が存在するヒトの腸管細菌叢には、グラム陽性細菌が減少していることが推測出来る。本研究は唾液中に含まれる細菌やバクテリオシンが、胃・腸管感染症を起こす細菌にどのような影響を与えているかについて検討した。 東京医科歯科大学小児歯科外来受診者20名より唾液および便検体を採取し、唾液由来細菌DNAより、抗菌活性の強いバクテリオシンであるMutacin IおよびIIそしてSmb産生細菌の検出、便検体よりグラム陽性の病原性細菌であるClostridium difficile、C. perfringensの検出をPCRにて行った。バクテリオシン産生細菌が存在する患者は5名、Smb産生が4名、MutacinI産生が1名であった。便検体の結果は、C. difficileは全ての患者でPCR陽性となった。C. perfringensは、S. mutnas陽性患者で63%(5/8)、陰性患者で33%(4/12)と、S. mutans陽性患者で高く検出された。 6名の患者唾液および便サンプルはメタゲノム解析を行なった。口腔内バクテリオシン産生細菌の有無による口腔内細菌叢および腸管内細菌叢の違いについて検討を行なったものの、兼対数が少なく、はっきりとしたデータとはなっていない。傾向としては、バクテリオシン産生患者で腸内細菌において、Firmicutes細菌数が減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定されていた唾液検体由来細菌DNAによる、S. mutansの存在の有無、バクテリオシン産生細菌の陽性陰性判定、そしてバクテリオシン産生細菌の分離は予定通り進められている。また唾液検体のメタゲノム解析は6サンプル行なった。便検体由来の細菌DNAによる、C. difficile、C. perfringensの存在についての判定も予定通り進められている。便検体由来細菌DNAによるメタゲノム解析も行われた。唾液検体20サンプルにおいて、S. mutans陽性者は8サンプル、40%であった。そのうちSmb産生S. mutansは3サンプル、MutacinI産生S. mutansは1サンプルであった。便検体20サンプルにおいては、C. difficile陽性が20サンプル、C. perfringens陽性が9サンプルであった。メタゲノム解析は唾液・便検体それぞれ6検体行なった。そのうち2件がSmb陽性、1件がMutacinI陽性検体である。結果の詳細は現在解析中であるものの、3件のバクテリオシン陽性検体においてFirmicutes細菌が減少している傾向が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はS. mutans MtacinI欠失変異株を作成し、MtacinIがC. diffcile、C. perfringensおよびMRSAに実際に抗菌活性を示すかを明らかとする予定であったものの、MutacinI変異株が作成出来なかった。本課題は、本研究における重要なものであり、本年に早急に作成を行ない、上記確認を行なう必要がある。C. difficileが全ての検体において陽性となり、この結果について検討を行なう必要がある。他のプライマーを用いたPCRやPCR産物のシーケンスにより確認する。全ての結果において、検体数が少ないため、はっきりとした結論は出せない。本年度中には検体数50以上を目標に、バクテリオシン産生細菌の有無と腸内細菌叢の関係について検討を行なう。バクテリオシン産生と腸管病原性グラム陽性細菌の有無については、現在のところ相関性が認められない傾向となっている。一方で門レベルにおいて、バクテリオシンを産生する口腔の検体は、腸内グラム陽性細菌が減少する傾向が認められている。これらの結果は、検体数を増やすことではっきりとしたデータにする予定である。口腔内にS. mutnasが存在すると、腸内にC. perfringensが存在する割合が上昇する傾向が認められた。本結果は非常に興味深く、さらに検体の解析を行なうことで明らかとする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入が予定よりも少なくすんだため、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度消耗品購入、論文投稿料に充てる予定である。
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