研究課題/領域番号 |
15K11428
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
大岡 貴史 明海大学, 歯学部, 准教授 (30453632)
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研究分担者 |
大川 周治 明海大学, 歯学部, 教授 (90144865)
村本 和世 明海大学, 歯学部, 教授 (10301798)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 摂食行動 / 食形態 |
研究実績の概要 |
今年度は自閉症モデルラットの摂食行動パターンや食餌の嗜好などについて明らかにすることを目的とし、研究を実施した。そのため、自閉症モデルラットとコントロールラットを生後11日から25日まで母子分離下で飼育を行い、ラットの摂食行動、ケージ内でのラット同士の相互干渉行動、2種類の食餌摂取量の計測を行い、摂食行動の特徴や経時的な変化について検討を行った。 自閉症モデルラットとコントロールラットでは、離乳期に摂取する食餌量に差異はなく、体重増加についても明確な差はみられなかった。食餌摂取時のラット同士の相互干渉は自閉症モデルラット同士では減少することが明らかとなっているが、日齢が増加するにしたがって徐々に回数が増えること、自閉症モデルラットとコントロールラットを一緒に飼育した場合にはコントロールラット同士の行動とほとんど差が生じないという結果が得られた。 2種類の食餌(甘味または苦み添加飼料)いずれかを供した場合、ラット同士で摂取量に差はみられなかった。一方、甘味添加飼料を生後18日まで供し、19日目から苦み添加飼料を追加した場合、自閉症モデルラットでは一時的に摂取量が減少し、その後に甘味添加飼料は摂取し始めたものの苦みの方はほとんど摂取しなかった。一方、コントロールラットではいずれの食餌も摂取し、飼育途中で食餌が変更されても摂取量はほとんど減少しなかった。これは食餌変更を15日あるいは21日としても同様であった。 これらから、自閉症スペクトラム障害児でみられる摂食行動や食事の嗜好における特徴の一部が自閉症モデルラットでも生じる可能性があると考えられる。また、時間の経過やコントロールラットの相互関係があることでこれらの特徴的な行動が変化する可能性があると推察されるため、来年度はその変化を起こしうる要素について検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前の予定をほぼ達成して研究は進んでおり、大きな遅れは出ていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、28年度の成果で示された摂食行動の経時的変化や嗜好の出現について追加実験を行い、自閉症モデルラットの摂食行動の変化関連について検討を行う。飼料の種類や摂食行動の特徴については既に観察が終了しているため、本年度は飼料の提供時期やコントロールラットとの飼育を開始する時期についての検討を行い、どのような条件が食行動や嗜好に影響するかを検討する。 中心となる研究としては、離乳期の味覚経験や他ラットとの相互干渉が生じた時期と摂食行動の変化について検討する内容となる。離乳期のラットでは受容した味覚の種類によって摂食行動が変化し、未体験の味覚や食事形態を摂取することで中枢神経活動のパターンが変化することが知られている。28年度の研究では、「甘味(2%ショ糖)添加飼料」から「苦み(10-4Mキニーネ)添加飼料」に変更する時期を5種類設定し、摂取量や摂取時間帯の変化、摂食行動、昼夜の行動変化などを計測する。同様に自閉症モデルラット単独飼育からコントロールラットとの共同飼育を開始する時期も5種類設定し、摂食行動や昼夜の行動パターンを計測する。 これにより、自閉症モデルラットを用いて嗜好や摂食行動の変化を生じさせるための条件を明らかにすることで、自閉症スペクトラム障害児の摂食行動や食事の嗜好を変容させるための基本的な条件について知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用するラットの交配が順調に行われ、実験動物の購入費や飼料代が予定金額よりも低額で実験が可能であったため。また、麻酔薬も安価なジェネリック品が購入できるようになるなど、使用薬剤の費用が軽減できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度の実験計画にて、追加実験のための動物の飼育に必要な物品の購入費や、研究成果発表のための論文校正(英訳)や使用する予定である。
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