今年度は、歯周疾患予防法研究のためのシミュレーションに適した条件の検討を行うと共に、グルコン酸クロルヘキシジンのバイオフィルムへ形成への影響観察を行った。 使用菌株はPorphyromonas gingivalis ATCC33277株、Tannerella forsythia ATCC43037株、Treponema denticola ATCC35405株、S.gordonii DL1株およびATCC10558株である。バイオフィルム形成には、0.1% acetylmuramic acid添加TYGVS 培地を使用した。バイオフィルム形成は、ヒト唾液による人工的ペリクル加工済みヒト歯・歯根部から切り出した切片上に行った。 はじめにODを1.5に調整したS.g2株の懸濁液を、被験切片が設置された容器内に各々満たし、24時間培養した。次いで懸濁液を除去し、各ODを1.5に調製したP. g、T. fとT. d懸濁液を被験切片が設置された容器内に入れ、さらに嫌気条件下(90%N2、5%CO2)で24時間培養した。経時的に菌叢分析を行った。さらに、S. g各株とRed complexの3菌種で作成したバイオフィルムを用いて各濃度(0~0.9%)に調整したグルコン酸クロルヘキシジンに1分間作用させ、菌叢分析を行った。なお、菌叢分析は調整細菌ゲノムを鋳型として増幅した165-V3V4領域アンプリコンをMiseq次世代シークエンサーにて配列解析を行った。 その結果、S. g 10558株+Red complex3菌種のバイオフィルムは、菌層の安定した期間がDL株のものより長く、歯周病予防のシミュレーションはほぼ完成したと考えられた。今後、このシミュレーション応用にあたっては、菌叢分析以外にATPなど他の評価指標を検討する必要があると考えられる。
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