研究課題/領域番号 |
15K11432
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
今井 敏夫 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (90120617)
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研究分担者 |
那須 優則 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (50130688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口臭物質 / 破骨細胞 / メカニカルストレス |
研究実績の概要 |
口腔細菌に由来する口臭物質(硫化水素)は、歯周炎の病因あるいは歯槽骨吸収の誘発因子であると考えられている。歯槽骨吸収は連続的・継続的に推移する。この継続的骨吸収機構に硫化水素とメカニカルストレスが関与していると仮説を立てた。本研究は硫化水素による骨吸収機構とメカニカルストレスとの細胞分子論的機序を解明し、歯周病の予防・進行阻止に寄与することを目的とした。 平成27年度はマウス骨髄由来の幹細胞から破骨細胞への分化過程におけるメカニカルストレスの生理学的役割解明を目的として実施した。本研究におけるメカニカルストレスとして、伸展ストレスを細胞に与えた。そのシステムはシェルパ(メニコンライフサイエンス社)を用い、専用チャンバーに細胞を播種した。細胞密度を高濃度に播種すると早期に細胞が剥離する傾向があり、また低密度では細胞の成長が遅くなることが判明した。したがって、中程度の細胞密度、チャンバーあたり10万個前後が最適であった。次に専用チャンバーの伸展率の違いによる細胞形態の変化を検討したところ、伸展率15、20%では対照群(伸展率0%)に比べ培養24時間で著しい形態変化が認められさらに浮遊した多数の細胞が認められた。一方、伸展率が2%から 10%では細胞形態の著しい変化は認められなかった。そこで伸展率10% 条件下で分化誘導因子である M-CSFおよびRANK-Lを添加し伸展ストレスを与えたところ、酒石酸耐性酸性フォスファターゼ陽性の多核細胞の出現が認められた。このことはメカニカルストレスが破骨細胞の分化に関与していることを示唆している。現在、細胞内アクチン線維の観察を詳細に解析していると同時に細胞内シグナルを解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は幹細胞から破骨細胞へ分化過程におけるメカニカルストレスの生理的役割を検討することが主目的であった。そのメカニカルストレスの細胞分化過程研究に適した条件を見出すことができ、今後の研究の進展の基礎を確立できたことから概ね順調に進んでいると考えている。引き続き、細胞内の形態変化ならびに情報伝達を解明していることから、平成28年度の研究につなげることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は硫化水素の破骨細胞分化誘導とメカニカルストレスとの関連性を解明することを目的とし、以下の内容で遂行する。 a.マウス骨髄細胞:前年と同様の手技でマウス骨髄からBMC-CD117を分離採取する。採取したBMC-CD117の分化能の保持はTRACP陽性細胞の出現率で評価する。 b.BMC-CD117への硫化水素曝露:細胞をチャンバーに播種し、24時間後に硫化水素曝露チャンバー内でメカニカルストレスを付与する。伸展率および伸展周期については平成27 年度のデータをもとに最適条件下で実施する。 c. 硫化水素存在下における破骨前駆細胞ならびに破骨細胞のアクチン線維の変遷:硫化水素曝露下において破骨前駆細胞から破骨細胞への分化過程におけるアクチン線維がどのように係わってくるかを経時的に検証するため、硫化水素曝露開始から10日間にわたり免疫蛍光染色法にて形態学的に追跡観察を行う。次に上記培養条件にメカニカルストレスを付加してアクチン線維の形態学的観察をおこない、比較検討する。 d.細胞内シグナリング:上記条件下におけるシグナリングの評価として、破骨細胞の分化指標として最も重要とされているNF-κB、NFATc1の発現をwestern blotting、RT-PCRにて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度計画予定であった、細胞内情報解析のうち、一部のシグナルの western blotingならびに RT-PCTの試薬納入が遅れ、支払い期限内の会計処理が遅れたことで約20万円が次年度に持ち越された。
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次年度使用額の使用計画 |
発注試薬が納品され次第、計画に従い解析を進める。
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