平成29度の目的は硫化水素曝露後の細胞内シグナリング分子の解析とした。 一部は前年度よりの継続として、破骨細胞のストレス培養器での付着並びに分化誘導を検討した。ストレス伸展の培養器はシリコン製で直接細胞を播種しても破骨前駆細胞(RAW264)の付着効率が低いことが判明した。そこでファイブロネクチン、コラーゲン1、poly-L-lysineの単独あるいは2種混合、3種混合にてコーティングを施し、細胞付着状況、 RANKL添加による分化誘導状況を比較検討したところ、細胞培養用プラスチック培養器に比べ、 分化誘導能が低い結果であった。さらに分化誘導中にメカニカルストレスを伸展ストレスとしてかけると、細胞の浮遊が認められた。マウス骨髄から BMC-CD117細胞においても細胞付着、分化能は RAW264と同様な結果を得た。これらの結果は、破骨前駆細胞から破骨細胞への分化は RANMLのような液性因子の他に、細胞膜表面の物科学的因子が関与しているとも推察されて。現在、メカニカルストレスを伸展に代えて収縮ストレス条件にて検討している。 次に骨芽細胞MC3T3-E1では、Matrigel Matrix(corning社)でシリコン製培養器をコーティングし、細胞を播種したところ、細胞付着能、石灰化能が良好、並びに伸展ストレス条件下でも細胞の剥離は認められなかった。そこでこの条件下にて口腔内の生理的濃度で48時間硫化水素曝露させた細胞を用いて細胞内シグナル分子の動態を検索した。その結果、硫化水素曝露させた細胞は非曝露細胞に比べて、ERK1/2のシグナル誘導が認められた。一方、TRPV1、p-p38、p-JNK、p-PKCには顕著な誘導はに止められなかった。引き続き細胞内シグナル分子を網羅的に探索している。
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