研究実績の概要 |
地上核実験等や東京電力福島第一原発事故で環境に放出された放射性核種の人体への移行を調べるために,日本全国より乳歯を集め,乳歯中での放射性核種(90Sr,238Pu, 239+240Pu)の蓄積を調査している(生年1999~2009年,1898本,2017年9月30日現在).前回の報告で,乳歯中の238Pu,239+240Puはすべての試料において0.0004mBq/g・Ca以下の検出限界未満であったので,2018年度からは,90Srのみの定量とした.関東地方{(千葉,埼玉,東京,神奈川),生年;2002-2004年,113本},東北地方{(宮城,山形,秋田,福島) ,生年;2002-2004年,40本},大阪府(生年;2002-2004年,48本),愛知県(生年;2002-2004年,31本),熊本県(生年;2002-2004年,83本),南九州地方{(沖縄,鹿児島)生年;2002-2004年,42本},東京都(生年;2002年,80本)の乳歯7試料群について,90Srの測定を実施した. その結果,関東地方群(6.9mBq/Ca,2011年3月11日時点),熊本県(5.7mBq/Ca,同時点),東京都(4.9mBq/Ca,同時点)の試料群から90Srが検出された.他の群はいずれも検出限界以下であった.前回の試料群では生年2004年の東京都の試料群から,7.6mBq/Ca(2011年3月11日時点)の90Srが検出されている.これらのデータから東京都がやや高い傾向が認められたが,試料群の大きさやバイアスがかかった結果が反映されたもので,地域性を表現しているものでないことが考察される.これらの90Srの乳歯の蓄積は,乳歯形成時期や90Srの土壌分布や食事のデータから鑑みて,福島原発事故以前に蓄積されたものであることが示唆された.
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