研究成果の概要 |
福島第一原発事故で環境に放出された放射性核種の人体への移行を調べるために,日本全国の乳歯の放射性核種(90Sr,238Pu, 239+240Pu)の蓄積について(約2000本),埼玉県,東京都,愛媛県(新居浜市,八幡浜市),関東地方(千葉,埼玉,東京,神奈川),東北地方(宮城,山形,秋田,福島),大阪府,愛知県,熊本県,南九州地方(沖縄,鹿児島)の乳歯群15試料について測定調査した.238Pu,239+240Puは検出限界未満であったが,東京都,関東地方,熊本県で4.9~7.6mBq/gCaの90Srが検出された(2011年3月11日時点).これは,原発事故でなく核実験の影響と示唆される.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
日本において福島原発事故の放射能汚染の人体の影響を乳歯を用いて調査した結果,乳歯中のPuは検出されず,90Sr(生年;2002-2004)は,東京都,関東地方群,熊本県の試料群で4.9~7.6mBq/gCa検出された(2011年3月11日時点).90Srは東北地方(被災地域)で検出されず,東京都,関東,熊本県で認められたが,試料群の大きさやバイアスが反映されたものである.これらは,乳歯形成時期や90Srの土壌分布から鑑みて,事故以前に蓄積されたものであり,現時点では事故後の人体への影響はないことが明らかにされつつある.生年別,地域別に継続して調査していることは今後の汚染の指標となり得る.
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