研究課題/領域番号 |
15K11436
|
研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
小笠原 正 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (10167314)
|
研究分担者 |
柿木 保明 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (10420762) [辞退]
藤井 航 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (50387700)
落合 隆永 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (20410417)
長谷川 博雅 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (60164828)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 口腔ケア / 保湿 / 剥離上皮膜 / 咽頭の汚染物 / 口腔乾燥症 / 要介護高齢者 / 経管栄養 / 粘膜ケア |
研究実績の概要 |
調査1.咽頭の汚染物の病理学的特徴を解明する:咽頭の汚染物を採取し、HE染色、AB-PASS染色、MUC2染色、MUC7染色を実施し、病理標本を作製した。組織学的に観察したところ、汚染物は、HE染色陽性の変性した重層扁平上皮が層状となっており、AB-PAS染色陽性の上皮間や周囲にある無定形物質の粘液のムチンで構成されていた。唾液腺由来のムチンを染めるMUC7染色では、全ての検体が陽性だった。一方、気道の分泌物由来のムチンを染めるMUC2染色では、全ての検体が陰性であった。咽頭の汚染物は、気道由来でないことが示唆された。すなわち痰である所見は認められなかった。 調査2.咽頭の汚染物の形成要因を明らかにする。:経管栄養患者27名を調査し、咽頭の汚染物が認められたのは、7名であった。咽頭の汚染物の有無と12項目との単相関を検討したところ、口腔の剥離上皮膜と舌背湿潤度との関連性が認められた。決定木分析により咽頭の汚染物の存在と関連がみられたのは、口腔の剥離上皮膜であった。口腔の剥離上皮膜の形成予防は、咽頭の汚染物の形成予防につながることが示唆された。本結果は、日本障害者歯科学雑誌(篠塚功一、小笠原 正、他:経管栄養の要介護者にみられる咽頭付着物の形成要因、障歯誌、37:22-27、2016.)に掲載された。 調査3.咽頭の汚染物と肺炎起炎菌との関連性を明らかにする。:要介護高齢者では、緑膿菌が最も多く検出され、次いで肺炎桿菌、セラチア菌の検出がみられたが、咽頭の汚染物の有無では差がみられなかった。咽頭の汚染物は、肺炎起炎菌に影響を与えていないことが示唆された。 調査4.咽頭の汚染物の形成予防を1~4の結果から立案し、介入研究により予防の検証を行う。:口腔の剥離上皮膜の予防が咽頭の汚染物の予防につながることが示唆されたので、口腔粘膜の保湿や粘膜ケアの介入の効果を検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「調査1.咽頭の汚染物の病理学的特徴を解明する」については、データ採取でき、分析をしているところであり、2016年10月1日から開催される第33回日本障害者歯科学会総会にて発表する予定である。学会発表準備と並行して論文執筆を行う予定である。「調査2.咽頭の汚染物の形成要因を明らかにする。」は、日本障害者歯科学会で発表し、論文としても本年度の1号に掲載された(篠塚功一、小笠原 正、他:経管栄養の要介護者にみられる咽頭付着物の形成要因、障歯誌、37:22-27、2016.)。「調査3.咽頭の汚染物と肺炎起炎菌との関連性を明らかにする。」は、データ採取・分析が完了した。「調査4.咽頭の汚染物の形成予防を1~4の結果から立案し、介入研究により予防法の検証を行う。」は、口腔の剥離上皮膜の予防が咽頭の汚染物の予防につながることが示唆されたので、本年度は、リキッドタイプとジェルタイプの保湿剤の使用、口腔粘膜の清拭による粘膜ケアのそれぞれの効果を介入研究で立証する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
経管栄養患者が150名入院している 屋宜原病院(沖縄県)の協力を頂けることになったので、患者および家族に説明し、同意書を頂くことになっている。40名以上の患者から同意が得られると思われる。40名以上の患者を対象に「調査4.咽頭の汚染物の形成予防を1~4の結果から立案し、介入研究により予防法の検証を行う。」の介入研究の準備を進めているところである。5月から4週間にわたり介入研究を実施していく予定である。具体的な介入方法は、口腔乾燥症への対応を継続的に研究してきた九州歯科大学の藤井 航准教授と検討する。採取予定の咽頭の汚染物は、引き続き病理学的標本を作成し、「調査1.咽頭の汚染物の病理学的特徴を解明する」で得られたデータを参考に咽頭の汚染物を鑑別する予定である。この調査により口腔の剥離上皮膜の形成予防のための方法についても結果が得られることになる。「調査1.咽頭の汚染物の病理学的特徴を解明する」と「調査3.咽頭の汚染物と肺炎起炎菌との関連性を明らかにする。」は、論文執筆に取りかかる予定である。
|