研究課題
調査1.咽頭の付着物の病理学的特徴を解明する:咽頭の付着物を採取し、病理標本を作製した。組織学的に観察したところ、付着物は、HE染色陽性の変性した重層扁平上皮が層状となっており、粘液はすべてMUC7染色陽性だった。MUC2染色では、全ての検体が陰性であり、咽頭の付着物は、気道由来でなく、重層扁平上皮の口腔粘膜由来であることが示唆された。調査2.咽頭の付着物の形成要因を明らかにする:経管栄養患者における咽頭の付着物の形成要因を検索するために、決定木分析を行った。咽頭の付着物の存在と関連がみられたのは、口腔の剥離上皮膜であった。口腔の剥離上皮膜の形成予防は、咽頭の付着物の形成予防につながることが示唆された。調査3.咽頭の付着物と肺炎起炎菌との関連性を明らかにする:経管栄養の要介護高齢者の咽頭からNeisseria(平均30.9%)が最も多く検出され、Streptococcus、Haemophilus(肺炎起炎菌)、Rothiaなどがみられたが、咽頭の付着物の有無で有意差が認められなかった。つまり咽頭の付着物は、肺炎起炎菌に影響を与えていないことが示唆された。調査4.咽頭の付着物の形成予防:口腔粘膜を保湿しない、1日2回の水で保湿、1日2回のジェルによる保湿して、1週間後の咽頭の付着物の有無を調査した。保湿しない時は、口腔の剥離上皮膜の形成率が93.8%、咽頭の付着物の形成率が18.8%、保湿ジェルでは口腔の剥離上皮膜が56.3%,咽頭の付着物が6.3%であった。口腔の剥離上皮膜がない者は咽頭の付着物はなかったが、保湿だけでは、咽頭の付着物の形成予防が困難であった。さらに時間経過で口腔の剥離上皮膜の形成過程を評価したが、6時間後,12時間後に剥離上皮膜の形成が確認された。したがって、6~12時間で口腔粘膜の擦拭を行うことによって咽頭の付着物の形成を予防できることが示唆された。
すべて 2017
すべて 学会発表 (6件)