研究課題/領域番号 |
15K11442
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研究機関 | 愛知学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
犬飼 順子 愛知学院大学短期大学部, 歯科衛生学科, 教授 (40319190)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯の酸蝕症 / 脱灰ー再石灰化処理サイクル / フッ化物 / エナメル質 / ヌープ硬さ / 表面粗さ |
研究実績の概要 |
脱灰-再石灰化処理サイクルを調節し、サイクルの違いとフッ化物の存在がエナメル質に与える影響をヌープ硬さおよび表面粗さにより検討した。 鏡面研磨した57個のヒトエナメル質試料を5群(G1、G2、G3、G4、G5)に分けた。G1およびG2は脱灰処理5分後蒸留水で水洗し、再石灰化処理を5分、蒸留水で水洗のサイクルを1回とし、このサイクルを4回繰り返した。G3よびG4は脱灰処理1分後蒸留水で水洗、再石灰化処理1分、蒸留水で水洗のサイクルを1回とし、このサイクルを20回繰り返した。G5はコントロール群とした。脱灰処理溶液にはpH 3.5の酢酸溶液を使用し再石灰化処理溶液にはG1およびG3は人工唾液、G2およびG4は225 ppmFのフッ化物添加人工唾液を使用した。脱灰処理前、脱灰―再石灰化処理20分後に試料表面のヌープ硬さと表面粗さを測定した。結果は処理時間ごとに5群の一元配置分散分析およびTukeyの多重比較とフッ化物の有無と処理サイクル時間を要因とした二元配置分散分析を行った。 脱灰-再石灰化処理20分後は5群間のヌープ硬さに有意差が認められ(p < 0.01)、G2が最も高かった。また、フッ化物添加群は人工唾液群と比べてヌープ硬さが有意に増加した(p < 0.05)。処理サイクル5分は1分と比較してヌープ硬さが有意に増加した(p < 0.05)。一方表面粗さは群間に有意差は認められなかったが、フッ化物の添加が表面粗さを有意に抑制した(p < 0.05)。 F-がエナメル質の表面や結晶周囲に被覆・防護して脱灰を抑制し再石灰化したことからヌープ硬さおよび表面粗さに影響したと思われる。また再石灰化処理の時間の増加に伴いエナメル質の耐酸性が向上するため、有意にヌープ硬さが増加したと考えられる。したがって長時間フッ化物や唾液を歯面に残すことが歯の酸蝕症の予防に重要な要因であると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は口腔内環境に近づけた条件で歯の酸蝕症の成立についてin vitroでの基礎的研究の成果が得られたと考えられる。 フッ化物と歯の酸蝕症については当初の予定よりも踏み込んだ研究内容となっており、さらに今後追及していく予定である。 しかし、当初の計画であったカルシウム、リン量を測定することについては結果が得られていないことから今後の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度の成果より歯の酸蝕症はフッ化物が大きく関与していることが示された。したがって、フッ化物の濃度やフッ化物の作用時間や期間が歯の酸蝕症とどのように関連しているかについて研究を推進していく予定である。また、申請時の予定である歯の酸蝕症の評価としてのカルシウム、リン量の測定は試料の表面積を正確に計測する必要があるが、正確な測定方法の確立に至っていない。まず、試料の表面積の測定方法を確立することが今後の課題であり、検討事項である。その対応として試料作成後に同一規格でウィンドウを作成する方法を試みる予定である。
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