研究実績の概要 |
フッ化物の作用時期と,F-濃度のヒトエナメル質表面性状への影響をその硬度と表面粗さおよび摩耗量により検討した. 56個のエナメル質試料を作成し,浸漬パターンとして,脱灰後NaF溶液に浸漬し,その後人工唾液で再石灰化させるパターンおよび脱灰後フッ化物添加人工唾液え再石灰化させるパターンに設定した.また,F-濃度は3種,500,1000,1500 ppmFに設定した.試料を対照群とそれぞれの浸漬パターンとF-濃度パターンを組み合わせた7群に分け,各溶液に繰り返し浸漬した.処理前と処理後に試料のヌープ硬さおよび表面粗さ(Ra, Rq, Rku),摩耗量を測定し,浸漬パターンとF-濃度パターンを要因とする二元配置分散分析とTukeyの多重比較で分析した. 試料のヌープ硬さはフッ化物作用群が,非作用群と比較して有意に高かった(p<0.001)が,浸漬パターン,およびF-濃度パターンのどちらの要因も有意差は認められなかった. Raおよび摩耗量は浸漬パターン間に有意差が認められたが(p<0.05),多重比較による有意差は認められなかった.また,二元配置分散分析の結果フッ化物の作用時期で再石灰化時に人工唾液作用群は単独作用群と比較してRa, Rqが有意に小さく(p<0.05),Rkuが有意に大きく(p<0.05),摩耗量は有意に少なかった(p<0.05).しかしF-濃度によって有意な表面性状の違いは認められなかった.したがって,人工唾液中のフッ化物の作用時期はエナメル質の表面性状に影響しているがF-濃度との関連が認められず,500 ppmFを超える高濃度のフッ化物はエナメル質の脱灰抑制・再石灰化には十分な濃度であり他のミネラルの存在が影響すると考えられた.また、高濃度フッ化物は長期間歯質とフッ化物が作用し,より再石灰化,脱灰抑制作用を示すと推測された.
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