研究課題/領域番号 |
15K11449
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
伊賀 弘起 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (40175188)
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研究分担者 |
白山 靖彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (40434542)
日野出 大輔 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (70189801)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯科衛生士教育 / グローカル / 遠隔会議システム / 口腔ケア支援システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的はフィンランドの歯科衛生士養成機関と連携してグローバルな視野と同時に地域視点で口腔保健を推進できる人材、すなわちグローカルな指導的歯科衛生士を戦略的に育成することである。初年度の平成27年度には本学部と学術交流協定を締結しているヘルシンキメトロポリア応用科学大学(平成28年9月にメトロポリア応用科学大学に改名)の歯科衛生士養成課程教員に対して定期的に開催する遠隔会議の中で、あるいは研究代表者が同大学を訪問して直接本研究の趣旨を説明し、賛同を得たうえで具体的な進め方を協議した。その結果として平成27年度にはフィンランドから受け入れた交換留学生と本学部学生が高齢者施設における効果的な口腔ケアを討議し、さらに両校の学生が協力して「高齢者施設の口腔ケアに関するアンケート」(英語版と日本語版)を作成した。平成28年度の最大の成果は本アンケートの実施について両校の倫理審査委員会の承認を得たこと、メトロポリア応用科学大学91名、本学部56名の学生を対象に調査を実施し、統計学的に解析できたことである。この結果の一つとして「高齢者に対する口腔ケアの知識修得」に関して十分であると考えている学生はメトロポリア応用科学大学では39.5%であったのに対して本学では20.8%であり,両大学間で有意な差を認めたことは特筆すべきである。また自由記載の内容からもメトロポリア応用科学大学学生の口腔ケアに対する積極的な姿勢が見てとれた。平成29年度にはこれらの結果を国内の歯科医学教育学会等で発表するとともに、両校でさらに検討して国際的な歯科衛生士教育カリキュラムの構築に活用する予定である。また今年度の交換留学生プログラムにおいてはこれまでに遅れていた「高齢者施設の職員を対象とした口腔ケアに関するアンケート」の試作を取り入れて、本研究を完遂させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要な共同研究機関であるメトロポリア応用科学大学との定期的な遠隔会議、同校からの交換留学生の受け入れ、交換留学生と本学学生による合同討議(「理想的な歯科衛生士を育成するための学習方略」、両国の高齢者施設における理想的な口腔ケア支援プログラム案」)は平成27年度と同様に概ね計画どおり実施できた。さらに平成28年度はメトロポリア応用科学大学側の強い希望によって計画した歯科衛生士学生を対象とした調査、すなわち「高齢者施設の口腔ケアに関するアンケート」(英語版と日本語版)を両校で実施し、すでにその統計学的解析も終えて、平成29年度には国内の学会等で成果を発表する予定である。加えてメトロポリア応用科学大学からの交換留学生が本研究課題の推進の一助として「フィンランドの高齢者施設における口腔ケアの現状」と題するレポートを作成してくれたことは当初予期していなかったことであり、本研究の今後の推進においても極めて有用な資料となると考えている。また当初遅れていた「高齢者施設の職員を対象とした口腔ケアに関するアンケート」の試作については平成29年度の交換留学生プログラムに組み入れる予定であるが、その実施施設、方法、時期については今後の相手校との協議によって決定する。しかしすでに「高齢者施設における理想的な口腔ケア支援プログラム案」の策定については前述したように毎年度に交換留学生と本学学生が合同で討議してその都度に「学生が考える理想案」を策定して最終的には教員とその実現の可能性についても交換留学生と共に討議している。これらの進捗状況と成果は本研究課題の重要な目的である「国際的な指導的歯科衛生士の育成」の観点からみて「おおむね順調に進展している」ことを示している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画最終年度となる平成29年度は両校の歯科衛生士学生が共同で作成し、両校で実施した「高齢者施設の口腔ケアに関するアンケート」(英語版と日本語版)の成果を日本歯科医学教育学会等で発表する予定である。さらにこれらの解析結果をもとに双方で共有できる歯科衛生士教育カリキュラムの開発を検討する。その中ではすでにメトロポリア応用科学大学と本学科で実施されている「ICTを活用した学習方略」を組み合わせて、当初の目標であるグローカルな指導的歯科衛生士の育成が可能なカリキュラムに発展させる予定である。また最終年度の「交換留学生プログラム」(派遣と受け入れ)の中で「高齢者施設の職員を対象とした口腔ケアに関するアンケート」の試作を予定しているが、具体的なアンケートの実施方法と時期については高齢者施設の担当職員との協議によって決定する。さらに申請時の研究計画にある「学生が考える高齢者施設における口腔ケア支援プログラム(案)」についてはすでに毎年、双方の学生が協議していくつかのプログラムを策定しており、討議に参加した教員はその都度、実施可能なプログラムになるように指導してきた。そこで申請時の計画にあるように本学科がすでに実践している「離島の高齢者施設における口腔ケア支援プログラム」と学生案を融合させ、さらには学生の参加も視野に入れて施設側と交渉を進める予定である。その際には高齢者施設と施設利用者に不利益が生じないように十分な配慮をすること、また施設側の状況を最優先して実施の可否を決定することを施設側に誓約する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内学会参加のための旅費、およびフィンランドへの渡航旅費はほぼ予定どおりの支出であった。ただ学生のアンケートの回収に時間を要し、解析が遅れたことから離島にある高齢者施設への研究打ち合わせ、論文発表を行わなかったことから269,975円の残額となり、次年度使用分となった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の最終年度となる平成29年度は、研究協力機関であるメトロポリア応用科学大学(ヘルシンキ)での成果発表を行うための渡航旅費、日本口腔ケア学会(沖縄)、日本歯科医学教育学会(松本)での学会参加と発表のための国内旅費、さらには論文投稿を予定しており、当該年度の残額を有効に活用できる。なお本研究計画の中で購入を予定していた物品(ノートパソコン、モニター等)は前年度までに購入を完了している。
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