研究課題
口腔乾燥の治療には保湿剤が用いられ,多くのジェル保湿剤やリキッド保湿剤が販売されているが,その選択根拠となる研究はわずかである.我々は,口腔乾燥患者は口腔粘膜における水分量の分布が不均一となり,舌粘膜の水分量の低下が口腔乾燥の自覚症状と強く関係していることを明らかにした.これらの結果は,舌粘膜における薄く均一な保湿の重要性を示唆しているが,リキッド保湿剤は,低粘度のため流動性が大きく,水分含有率は高いが経時的な蒸散も大きいため保湿効果が短く,対するジェル保湿剤は,高粘度のため薄く均一な塗布が困難なうえ,水分含有率が低い.そこで,水分含有率の高いリキッド保湿剤で口腔粘膜に均一な保湿を行った上に高粘度で停滞性のあるジェル保湿剤を蒸散・流動防止のため重ね塗りをするコンビネーション保湿を着想した.本研究の目的は,コンビネーション保湿による新規保湿法を開発し,その有効性について評価するものである.平成29年度は,コンビネーション保湿に有効な組み合わせの検討として,リキッド上にジェルを重ね塗りした場合の味覚の観点から検討を行った.カンジダ菌に対して抗真菌作用を有するリキッド保湿剤(a,f)とジェル保湿剤単体(F)ならびにその組み合わせにおける糖度を測定した結果,27℃における保湿剤の糖度(Brix値)は,リキッド保湿剤単体のaは10.2,fは15.5であり,ジェル保湿剤単体(F)は39.2であった.一方,リキッド保湿剤とジェル保湿剤の混合の糖度は,a+Fで23.2,f+Fで29.4とリキッド保湿剤単体より増加し,ジェル保湿剤単体と比べると低下した.また,リキッド保湿剤同士の混合a+fでは12.7とほぼ両者の中間値となった.これらの結果より,混合する保湿剤の種類を選択することで,抗真菌性を保ちながら様々な嗜好性に対応できる可能性が示唆された.
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Journal of Prosthodontics
巻: 27 ページ: 52~56
https://doi.org/10.1111/jopr.12458
http://w3.hal.kagoshima-u.ac.jp/dental/prostho2/gakuhotetsu2.pdf