平成29年度は、グリーフケアおよびご遺体の尊厳に配慮した審美的遺体修復について、閉口処置および欠損部位に使用する材料の検討を行った。 閉口処置については、歯科材料および市販品で行える方法を検討した。使用する材料は、簡易な操作で閉口状態を保てることに加え、閉口処置後の再開口が必要な処置に対応するため、ある程度の力を加えることにより、歯や軟組織を傷つけずに再開口できること、さらにグリーフケアの観点より、埋葬(火葬)により残留しないことなどの条件を満たす必要があった。歯科材料は、操作性がよく、自由に変形可能であるユーティリティーワックスや化学重合型レジン、光重合型レジン等について検討し、市販品は、接着剤およびさまざまな素材のスポンジを検討した。それぞれの材料を上下顎の歯に用い閉口させ、状態を確認し、さらに、再度、開口させるための作業を検討した。歯科材料においては、光重合型レジンによる閉口処置が簡便かつ確実であり、再開口処置が必要な場合にも、ねじるような力を加えることで、開口が可能であった。市販品では、海綿状のスポンジに接着剤を浸潤させ使用する方法が有用であった。 欠損部位に使用する材料は、過去の研究により歯科用印象材による人工皮膚の作製を考案しており、今回はこの皮膚に簡易的な静菌作用を付与するためにアロマオイルの添加を検討した。歯科印象材にアロマオイルを添加すると、硬化時間が若干延長するものの、人工皮膚として使用する耐強度に影響はないものと考えられた。また、化粧に用いるファンデーションへのアロマオイルの添加についても、色調や物性等への影響は認められなかった。 本研究結果は、災害時のみならず平時においても、遺族へのグリーフケアの一助になると考えられる。
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