研究課題/領域番号 |
15K11463
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研究機関 | 公益財団法人神経研究所 |
研究代表者 |
小林 美奈 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (40596037)
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研究分担者 |
伊藤 永喜 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (90287681)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 睡眠時無呼吸症候群 / いびき |
研究実績の概要 |
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome; OSAS) の発症に顎顔面口腔領域の形態的異常が深く関与することが国内外で明らかとなってきていることから、歯科領域を舞台にして、OSASを早期発見して適切な治療へ誘導することは十分可能と考えられる。本研究は、OSASに特有な形態的アンバランスを客観的に評価する指標を取り入れたスクリーニング法を新規に考案し、その実用性を前向きに検証するものである。 平成27年度は、夜間のいびきや無呼吸を主訴として睡眠外来を受診した患者に対し、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査を施行してOSASの確定診断をおこなった。また初診来院時に、「箱」と「肉」のバランスを簡便に評価可能なマランパチ分類、首周囲径、オトガイと輪状軟骨を結ぶ直線から顎下部軟組織への最大距離である顎下部距離計測などの身体指標の計測や、高血圧や心疾患などの既往および合併症の有無の確認、日中の眠気や疲労感などの自覚症状等を調査し、新規スクリーニング指標の候補となる項目のデータ収集を行った。さらに、作成された新規スクリーニング法と従来型のスクリーニング法との精度を比較検討するため、パルスオキシメータによる検査の実施と得られたデータの蓄積を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、OSASの新規スクリーニング指標を考案する為、研究被験者のデータ収集とデータベース構築の期間とした。平成28年3月末時点で約250名の研究データが蓄積され、研究計画当初に予定していた、顎顔面形態指標を含めた新規スクリーニング項目の選定(目標症例数100名)と睡眠外来受診患者における新規スクリーニング項目の妥当性の評価ならびにパルスオキシメータによるスクリーニング成績との比較(目標症例数100名)の解析を実施するために必要な症例数を収集することができた。 さらに、平成28年度後半から予定されている、健診受診者を対象とする新規スクリーニング法を用いた前向き調査のOSAS確定診断であるPSG検査を在宅でも実施できる可能性を探るため、携帯型PSG装置を用いたOSASの診断精度の検証を行った。45名の被験者に対し、OSAS診断の標準検査である監視下におけるPSG検査と簡易型PSG装置の同時測定を行い、無呼吸や低呼吸の検出能力を評価したところ、携帯型PSG装置は正常群及び軽症症例から重症症例まで高い精度を有することから、本装置は、健診受診者を対象とした前向き研究においてOSASの診断に使用できることが検証された。 現時点で得られたデータは、平成28年7月の第40回日本睡眠学会定期学術集会と、平成28年9月の23rd Congress of the European Sleep Research Societyで発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は、研究計画に基づき以下3点を実施する。 1.顎顔面形態指標を含めた新規スクリーニング項目の選定をおこなうため、平成27年度に得られた被験者データから、OSASを予測しうる身体指標のカットオフ値を決定し、身体指標、合併症、自覚症状の中からスクリーニング項目の候補を抽出し、これによる予測確率(感度/特異度)のもっとも高い新規スクリーニング項目の組み合わせを選定する。 2.上記で採用された新規スクリーニング法の睡眠外来受診患者における妥当性の評価を行い、必要に応じて項目の微調整を加える。また、従来のOSASスクリーニング検査であるパルスオキシメータの酸素飽和度低下指数(ODI/時間)を用いた手法の精度も評価し、両手法のスクリーニング成績の比較を行い、本スクリーニング法の妥当性を検証する。 3.平成28年後半より、平成29年度に行う新規指標の前向き調査にむけた準備をおこなう。具体的には、少数例の健常者を対象に新規指標を用いたOSASスクリーニングとPSG検査による確定診断を行い、本指標の妥当性と調査票運用時の使用感などを検証し、必要に応じて前向き調査の手順の改善を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にパルスオキシメータの購入を予定していたが、健診受診者を対象とした前向き研究で使用する検査装置のバリデーションを実施してから機器選定を行う事としたため、その分が未使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究費使用計画としては、前向き研究を実施するため、データ収集・解析に必要な機材として簡易PSG検査装置や解析ソフトを購入する。また、被験者およびデータ収集・整理等にかかわる担当者への謝金として使用する。
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