研究課題/領域番号 |
15K11466
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 千世 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (30262736)
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研究分担者 |
市川 元基 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (60223088)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 回想想起 / 回想刺激 / 近赤外線分光法 / 前頭葉代謝解析 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、回想法の効果を脳活動の定量評価および自律神経機能を用いて明らかにすることである。平成27年度には地域社会において回想法や回想に対する認知や活用状況を確認することを計画した。まず、実際に回想法に取組む臨床心理士や地域の医療施設や訪問看護に関わる看護師からの情報収集を行い、回想法としてグループミーティングで行い、回想刺激としては日常生活や思い出などをきっかけに、一人一人に発言してもらう方法が主なものであった。また、回想法を1~2回/週程度の頻度で行い、複数回繰り返し実施していた。回想刺激や回想の内容、回想時の気分や効果については多種多様であることが確認された。従って、回想法に関する質問紙調査の実施については、調査対象・内容について再検討することとした。また、効果の測定を行うための回想刺激についても、言語・視覚刺激ともに回想内容と照らして慎重に選択する必要があることが確認された。 脳活動を含む生理学的指標のデータ収集の準備として、データ収集方法についても同時に検討を行った。検討事項は、それぞれの機種の特性も踏まえた装着の手順や測定時の体位、回想刺激の提示方法、回想前後に収集する回想刺激の効果を測定するための主観的データ収集項目などである。 NIROのプローブを高齢者に密着固定することに課題があり、左右の脳活動の安定したデータ収集が困難な状況が確認されている。主観的データにおいては項目数も多いことから、有効な回答を得るためには研究補助者による聞き取りでのデータ収集が必要であり、項目数の選定及び収集方法をさらに検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画は、1)認知機能低下および回想法に対する実態調査及び2)データー収集の準備であった。 1)実態調査の準備として、実際に回想法に取組む臨床心理士の開催する回想法に関する研修会に参加して知見を深めるとともに、地域の医療施設や訪問看護に関わる看護師からの情報収集を行った。研修「要支援の高齢者に対する心理的支援としての回想法」「老人病院における重症認知症と回想法:工夫と課題」では、軽度認知障害に相当する対象への心理支援やうつ予防のための回想法、病院での実践目的や実践方法(対象・期間・記録・場所の設定)、記憶機能への配慮や不安の低減の工夫について臨床での実態について情報を得た。回想は集団療法として行われており、回想刺激としては季節の名称や食べ物、親などの言語が用いられていた。回想の効果については、発言などの変化を表現できる項目や療法者が期待することを評価項目として変化が記録され、痴呆症状評価尺度(GBS)を用いた評価では、感情や知的機能、運動機能など評価されていた。在宅療養支援や地域密着型の入院施設においては、介入としての回想法の実施は少なかった。従って、回想刺激や評価方法につい手の検討が必要であった。 2)データ収集準備としては、高齢者に回想刺激を与え脳活動を測定することを想定した、体位の設定、左右の脳活動を安定的に計測できる方法について確認した。NIROのプローブの固定方法や装着の手技について、正確なデータ収集に課題が残り、新しい規格に変更することにした。規格の異なる製品への変更のため対応するPCの設定変更の必要となり、次年度業者に依頼することにした。高齢者が対象となる研究であり、測定項目の多さと煩雑さが対象への負担軽減となることが想定されたことから、器材装着の手順や測定時の体位、回想刺激の提示方法、主観的データ測定手順の検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、今後地域に暮らす健康高齢者の回想刺激による回想想起の効果を測定する計画である。平成28年度は回想刺激として言語を用いる。計画では「懐かしく思い出すことができる遊びや生活について聞かせてください」を回想刺激としていたが、回想内容にばらつきが生じる可能性が確認されたため、回想刺激の内容について検討を加えて実施する。 データ収集はNIROの調整後から開始にむけて、調整の間に倫理審査申請、人員の確保、役割分担等を決定し、データ収集の準備を行う。有効な回答を得るためには研究補助者による聞き取りでのデータ収集が必要であり、人員の配置などについてもさらに検討する。また、データ収集を担当する研究補助者は学部学生となるため、長期休暇に合わせてデータ収集スケジュールを設定し、被験者募集活動を進める。 本研究課題の最終年度には、回想を傾聴するスタッフへの効果についてNIROを用いて脳活動を測定する計画であるが、スタッフのデータを安定して、正確に収集する手技の確立には課題がある。高齢者の想起内容が多様であれば、傾聴するスタッフへの影響も異なることが推測されるため、高齢者の回想時の脳活動についてのデータの検討が進んだ段階で、スタッフを対象とした研究計画について、検討する必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ取集準備を進めた際、NIROのプローブの規格を変更する必要が明らかになった。プローブの規格の変更には、現在使用しているノートPCの設定が必要となることも確認された。現在使用中のPC容量の不足も懸念されるところとなったが、プローブの規格変更に伴う費用について次年度の予算の計上はしていなかったため、可能な範囲で次年度への繰り越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度請求額と合わせてにNIROの設定およびプローブの新規購入に使用する。
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