研究課題/領域番号 |
15K11466
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 千世 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (30262736)
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研究分担者 |
市川 元基 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (60223088)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 回想法 / 前頭葉代謝解析 / 自律神経系 / 心理尺度 / 想起刺激 |
研究実績の概要 |
本研究は、一回の回想の効果を前頭葉の脳活動及び自律神経機能、いくつかの心理尺度により明らかにすることである。また回想のきっかけとなる想起刺激を3種類用いて、回想想起刺激によって前頭葉の脳活動や自律神経機能、心理状態に違いがあるかを明らかにすることを目指している。 介入の方法は、リクライニング型の椅子によりかかった状態で2分間の安静後、想起刺激を提示して「10歳から15歳の記憶」を2分の回想想起してもらい、3分間の早期内容の説明、2分間の安静である。想起刺激は3種類で、言語的想起刺激と写真を用いた視覚的想起刺激、お手玉を手渡して回想を想起する触覚的想起刺激である。 平成29年度は、17名のデータを収集し、そのうち11名について脳活動及び心理尺度について分析を行った。分析された対象の想起刺激は、言語的刺激と視覚的刺激である。分析の結果、1回の回想刺激による脳活動では酸素化ヘモグロビンの濃度の有意な差はなく、脱酸素化ヘモグロビンの濃度は、左右前頭葉において刺激に関わらず、回想法の実施により減少し、刺激後に安静を促しても回想前より減少することが明らかになった。 言語による想起刺激では酸素化ヘモグロビンの濃度の有意な差はなかった。脱酸素化ヘモグロビンの濃度は、右前頭葉では回想した内容を説明することで減少し、左前頭葉では回想法の実施により減少し、刺激後に安静を促しても回想前より減少した。視覚的想起刺激では、酸素化ヘモグロビンの濃度が右前頭葉で回想想起により増加し、 脱酸素化ヘモグロビンの濃度は、視覚的想起刺激による回想法を実施し安静を促した時に有意に減少することが明らかになった。 心理尺度では、回想の前後で有意な変化があったのは気分や感情、主観的健康感だった。 今後も健康高齢者のデータ収集・分析を進める。また、回想を促すスタッフの脳活動や心理尺度についても明らかにできるよう研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ収集準備の遅れ及び研究協力者のデータ収集スケジュールの調整に時間を要した。17名のデータ収集は、被検者及び研究者らのスケジュールで調整したため10月から3月と長期間を要し、目標とする30名には及ばなかった。触覚刺激の準備も遅れ、触覚刺激による回想を行った非験者数も少ない状況である。 また、回想を促すスタッフの脳活動や心理的な変化を明らかにすることも目指している。しかし、回想を促すためのスキルの安定には経験することが必要である。17例の回想想起を促しているスタッフは1から2名であり、測定器材の都合からもデータ収集に至っていない。今後のデータ多収集の方法について検討する必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、平成29年度に収集したデータの分析を進めるとともに、合計被検者数30名を目標にデータ収集及び分析を進める予定である。また成果の報告を始める。まず、日本看護科学学会学術集会において報告するとともに、論文による成果報告の準備を進める。 脳活動は酸素化ヘモグロビン値の変動により説明されるとする報告も多いことから、分析の方法についても検討を進める。 回想を促すスタッフの脳活動及び心理変化に関するデータ収集は、高齢者の被験者募集期間及びデータ収集日程の延長に伴い、遅延している状況である。遅延を踏まえ、予定数を縮小し、高齢者のデータ収集後に実施する計画に修正する。さらに収集データ項目についても再検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
質問紙や資料、提示刺激の印刷に用いているプリンターのトナーの交換用トナーを補充した際、予算と購入金額との差が生じた。次年度使用額は平成30年度請求額に合わせて消耗品費として使用する計画である。
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