本研究の目的は、エビデンスが確かで評価システムと一体となっている、倫理的コンピテンシー・モデルに基づいた、また学習者のニーズにも沿った、看護職者のための倫理学習プログラムを開発、実行、評価することであった。看護職者の倫理的問題に対する実践力が向上することは、看護ケアの質の向上につながるだけではなく、多職種協働のチーム医療の推進にも寄与する。また、これまで曖昧であった看護職者の倫理的な実践力の具体的な内容を行動レベルで明確に示すことも可能となる。 研究1:ハイパフォーマー看護職者へのインタビュー調査を行い、質的内容分析によって看護職者の倫理的コンピテンシー・モデル原案を作成した。 研究2:作成したコンピテンシー・モデル原案をデルファイ法によって精選し、学習者のニーズ調査等も加味して看護職者のための倫理学習プログラムを開発した。 研究3:学習プログラムを実行・評価しつつ、プログラムの学習効果とコンピテンシー・モデルの評価票としての信頼性・妥当性、有用性を統計学的に検証した。 看護実践における倫理的ケアのコンピテンシーを明らかにし、評価尺度の原案を作成した。看護実践における倫理的課題への取り組みに関するハイパフォーマーとして職場の長から推薦が得られた看護職者または高度実践看護師15名を対象に行動結果面接を行った。903分の録音データを質的記述的に分析したところ、498コードの看護師の体験が類似性と相違性の比較検討を経て抽象化され、22サブカテゴリ、4カテゴリが抽出された。カテゴリは【善いケアに関する感性・価値を表現する】【より善いケアとは何かを考えながら行為する】【より善いケアを提供するために間接効果をもたらす】【より善いケアの学習に向けて行動する】であった。
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