本研究は採血の手技のうち、個人差が大きい穿刺に着目して、成功率の高い採血のための教育モデルを開発し、その効果を検証することを目的としている。これまでの研究実績として、平成27年度に穿刺力を客観的に数値化して測定するための二軸力測定器の作成、および穿刺力を測定する際に穿刺対象となる血管部の深度、皮膚部の硬度が異なる6種類の血管皮膚モデルを開発した。平成28年度から29年度にかけては熟練者の穿刺手技を初学者の手技との比較から明らかにするため、開発した測定器と血管皮膚モデルを用いて、熟練者および初心者の採血穿刺手技を定量的な測定と分析を行った。今年度は、熟練者と初心者の穿刺動作の比較、穿刺対象となる皮膚・血管状況による差異の検討を行った。 採血に熟練していると自己認識のある看護師12名(以下、熟練群)、経験1年未満の看護師8名(以下、初心群)を対象とし、6種類の皮膚モデルを穿刺対象とした穿刺動作の測定を行った。また6種類の皮膚モデルの蝕知による穿刺困難の程度や想起される対象像に関する主観評価を行った。熟練群、初心群の穿刺動作の比較で、穿刺力に違いはないが、穿刺の速さは熟練群で速く、皮膚モデルによって変える傾向があった。また熟練群は血管挿入後針を水平にする動作が明瞭なのに対し、初心群ではみられなかった。皮膚モデルの主観評価の結果から、穿刺判断に先立つ皮膚血管のアセスメントは同様である一方、熟練者は皮膚血管の状態にあわせて穿刺動作を意図的にコントロールしていることが予測できた。
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