研究課題/領域番号 |
15K11479
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
小野 美喜 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (20316194)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 診療看護師 / 倫理的問題 / 問題解決思考 / 組織体制 / プライマリケア / 看護実践 |
研究実績の概要 |
平成26 年(6 月)に「特定行為に係る看護師の研修制度」が法制度化され、新たな看護師の役割拡大つまり裁量範囲が拡大した。本研究はこれを背景に、看護師に求められる倫理的姿勢や倫理的問題の解決能力を再検討するために、次を研究課題としている。①看護師の新たな役割拡大に伴い生じる倫理的問題は何か、②これまでの看護倫理教育に追加・強調すべき点は何か、③倫理的問題を解決するための組織的な体制はどのようにあるべきか、の3点である。実践で派生した倫理的問題と問題解決の方略を個人また組織の側面から明らかにし、「特定行為に係る看護師の研修制度」の中での看護倫理教育を充実させ、倫理的問題に対応できる職場環境を整えることを目的としている。 今回は大学院教育にて「特定行為に係る看護師の研修制度」を修了した看護師(以下、診療看護師)に焦点をあてた。診療看護師は厚生労働省から指定された21区分38特定行為の全てを実施できるよう育成され、患者に全体的にアプローチできるような活動をしている。地域包括ケアの推進のためには、まずはこのような活動をする診療看護師の育成が重要であり、かつ倫理的な問題も生じやすいと想像できる。そのうえで次のように研究計画を組み立て、実践を進めた。1)海外文献の抄読を行い、知見を整理した。2)研究計画を再検討し倫理審査委員会に申請し承認を得た。3)対象となる診療看護師に研究協力の承諾を得て対象者を確保した。海外論文の抄読からは、診療看護師と同様な活動を自律的に行うNursePractitionerについて知見を集めた。多くは貧困者の治療の意思決定について倫理的問題を抱えていることがわかった。海外と日本の保険体制の違いも考慮しなければならないが、そのような視点を加えてインタビューガイドを作成することとした。今後インタビュー調査を始めとする調査を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の研究計画は、フィールドリサーチのための準備と海外で活動するNursePractisioner(以下 NPとする)に関する倫理的問題と対応・教育に関する知見の収集を行うことであった。実際には以下のように具体的に実施した。 1)海外のNP が体験する倫理的問題に関する文献収集:NPが体験する倫理的問題に関する文献を収集し知見を整理している。資料から倫理的問題の性質、問題解決方法、組織体制について海外の知見を分析中である。海外で同様の活動をしているNursePractitionerは、治療の意思決定に係る点で多くの倫理的問題を抱えていることがわかった。しかし、この背景には他国の保険制度の問題も影響することから、一概に日本に共通するとはいえないが、情報を考慮しつつインタビューガイド案を作成した。2)研究計画書を作成し研究倫理安全委員会に申請:日本で活動する特定行為に係る看護師約10名を想定した調査の研究計画を立案し、所属大学の研究倫理安全委員会に平成27年12月に研究申請し承認を得た。対象者にはすでに内諾を得ており、平成28年度に個別インタビューを行う。個別インタビューの時間が取れない場合は、上記対象者が集まる機会を活用し、フォーカスグループインタビューに切り替えることも検討する。ただし、倫理的な問題という大変デリケートな内容がインタビューとなるためできる限り個別インタビューを実施するように心がけたい。3)NPの看護倫理教育に関わる海外専門家からの情報収集のための準備:海外でNP活動をしている看護師から看護倫理教育海外専門家の紹介を受け、平成28年度もしくは平成29年度に上記テーマに係る実情を把握するための面接を交渉中である。当初の計画では研究者 が海外に赴く予定であったが、海外から対象者を招聘し、講演会等も開催することも視野に入れて交渉する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は対象となる診療看護師10名へのインタビューを実施し、分析を完了させたい。その上で質問紙を作成し、平成29年度に全国調査ができるように準備を整えていきたい(研究対象施設や研究計画書の再検討、倫理委員会への申請等)。 また、海外で活動するNursePractitionerに対するインタビューも含めて実施する。倫理教育を行っている海外専門家からの情報収集については、平成29年度に海外NursePractitionerの紹介を通して、面会機会をつくりインタビューを行う、もしくは国内へ招聘して講演会等で情報提供してもらうなどの方法を検討したい。活動計画によっては研究費用が不足することも考えられ、研究費を考慮しつつ方法を選択していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にインタビュー調査を実施する予定であったため、調査に要する旅費、謝金、人件費の使用がなかった。また海外専門家への面接のための旅費も今年度は執行しなかった。現在調整中である
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に調査を実施するため、これらに要する旅費、謝金、人件費の支出を執行する予定である。また海外専門家への面接については現在調整中であり、平成28年度もしくは平成29年度に海外専門家との面接のための旅費を執行する計画である。
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