研究課題/領域番号 |
15K11480
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研究機関 | 青森中央学院大学 |
研究代表者 |
三國 裕子 青森中央学院大学, 看護学部, 准教授 (80707323)
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研究分担者 |
千葉 正司 弘前学院大学, 看護学部, 教授 (40003652)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 足背 / 静脈穿刺 / 皮静脈 / 皮神経 / 動脈 |
研究実績の概要 |
本研究は、足背を中心とした、下肢における安全な静脈穿刺部位を明確にし、静脈穿刺に関する医療事故防止および看護技術の発展に寄与することを目的としている。 平成28年度は、新たに24体の解剖実習体を用い、足背を中心とした皮静脈と皮神経、動脈、静脈弁について描写および写真撮影によって、皮静脈の走行パターン、足背および下肢の皮静脈の外径、静脈弁の場所と出現数、皮静脈と皮神経および動脈の位置的関係を調査した。さらに病院で足背に静脈注射を施行されている患者11名の足背の皮静脈への点滴穿刺部位についても調査した。その結果、足背中間は皮神経が皮静脈の深層を走行する頻度が最も低く、患者においては足背中間の足背上行静脈へ点滴を刺入する頻度が高かった。これは留置針の固定のしやすさが考えられるが、実習体調査と合わせて分析すると、足背中間は静脈穿刺の際の危険が少なく、針の固定が安定する部位であることが明らかになった。次いで、文献や成書を用い、視点により分類されたデータから普遍性を抽出し、理論上の一般化を試みた。その一つとして、浅腓骨神経、深腓骨神経、腓腹神経の走行の分類に着手した。先行研究を基に本調査を分類した結果、足背の皮神経分布では、深腓骨神経と浅腓骨神経の交通、深腓骨神経と腓腹神経の指縁分布、腓腹神経と浅腓骨神経の交通が重要であることが明らかになった。これらについては、学会において報告している。 次年度は、解剖実習体と生体の両者のデータを統合してその妥当性をさらに検証し、安全な下肢の静脈穿刺部位を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、27年度に引き続き解剖実習体の調査件数を追加することができ、皮静脈・皮神経の走行のパターンを構築しつつある。また、患者の足背への静脈穿刺部位の調査件数も増やすことで、穿刺部位の一定のパターンを導き出すことができた。これらより、おおむね順調に進展していると考えている。ただし、静脈弁の調査と動脈走行・変異については十分な調査期間が得られなかったため、この点が今後の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、事業期間の最終年度であるため、解剖実習体と生体の両者のデータを統合し根拠に基づいた安全な静脈穿刺部位の選定を行う予定である。また、静脈可視化装置を使用して生体の足背の皮静脈について調査し、解剖実習体との比較も試みる。これは限られた件数の実習体の調査を補うことを目的としており、静脈走行パターン作成のためには調査件数の確保は重要だと考えている。3年間の調査結果をまとめ、論文作成、海外文献への投稿、学会発表を行うことを計画している。 さらに、平成29年度は「ひらめきときめきサイエンス」に採択されており、研究成果の社会還元と普及も研究推進として進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は設備備品として3Dプリンタを500,000円で計上していた。しかし、プリンタを使用するためのプログラミングが本研究においては予想以上に複雑であり、他の設備費や人件費などの予算も生じることが考えられたため購入を中止した。このことにより、実支出額が予定より少なくなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、静脈可視化装置を用い生体の静脈走行の研究を進めることとしたため、静脈可視化装置購入のための設備備品費の増額を予定する。
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