研究課題/領域番号 |
15K11481
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
窪田 聡 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (90433614)
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研究分担者 |
平田 文 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (30582077)
遠藤 豊 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (90194050)
窪田 光枝 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (70349900)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 体幹角度 / 頭頸部位置 / 嚥下反射 / 筋電図 / 舌骨上筋群 / ファーラー位 |
研究実績の概要 |
ファーラー位は体幹を30~60°に起こした状態の座位姿勢で,身体機能が著しく低下した患者が日中を過ごしたり,食事の時に起こすため用いられることがある.このような患者の中には,嚥下障害のため,姿勢や食形態等に注意が必要となることがある.そこで,我々は,ファーラー位中の姿勢の違いが嚥下機能に及ぼす影響を検討し,ベッド上での摂食における適切な姿勢を探索することとした. 対象は,健常若年成人15名とした.体幹はベッド傾斜角度30°,60°,90°と頭頸部中立位と屈曲位を組み合わせ(全6通り),ランダムに各5試行ずつ実施した.1試行につき5mlの水を嚥下し,筋電図にて舌骨上筋群の活動電位を記録した.飲み込み易さはVASで測定した.筋電図は,RMSの最大値(RMSmax)と平均値(RMSmean),筋活動時間に分けて解析した.その結果,全てのベッド傾斜角度において,RMSmaxとRMSmeanが頭頸部中立位で有意に高くなった.筋活動時間は,ベッド傾斜角度30°,60°では中立位の方が有意に長かったが,90°では有意差はみられなかった.VASより,飲み込みやすさは,ベッド傾斜角度30°,60°では頭頸部屈曲位が有意に飲み込み易く感じており,ベッド傾斜角度90°では有意差はみられなかった.全ての評価指標で,頭頸部位置に関わらず,ベッド傾斜角度の違いによる影響はみられなかった. 以上の結果から,頭頸部屈曲位では,中立位よりも嚥下時の舌骨上筋群の活動が低くなり,このことが飲み込み易さに繋がっている,と考える.また,若年者では,ファーラー位での摂食の場合,ベッドの傾斜角度に関係無く,頭頸部の前屈が嚥下時の筋活動を小さく抑え,嚥下しやすい姿勢であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験条件の整理のための準備に時間を要した.特に,嚥下反射惹起の確認のための喉頭挙上の動きを測定するセンサ選定と貼付位置の決定に時間を要した.しかし,その後は順調に進み,28年度前半には高齢者の嚥下機能測定が完了する見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
28年度前期中に健常高齢者を対象とした実験を実施する.被験者は,小田原市シルバー人材センターを介して募集し,実験は国際医療福祉大学小田原保健医療学部で実施する.また,後期より若年者対象のファーラー位における体幹部の姿勢の違いによる消化管活動への影響を胃電図を用いて検討する.また,本実験に先立って,実験環境と条件の整理のためプレ実験を実施する.実施場所は,嚥下機能の実験同様に,国際医療福祉大学小田原保健医療学部とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に,高齢者を対象とした実験がなされなかったため,その分の費用を次年度に繰り越すこととなった.
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次年度使用額の使用計画 |
すでに,若年者の実験が完了し,実験条件・環境の整理は完了しているため,28年度の前期中に高齢者を対象とした実験を実施予定となっている.そのため,舌圧センサの追加購入や,被験者謝金支払いを行っていく.また,嚥下機能に関する実験と並行し,胃電図測定のための環境・条件整備も実施していく予定であり,電極,胃電図アンプの購入,実験食も購入していく.
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