研究課題/領域番号 |
15K11487
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
石原 由華 椙山女学園大学, 看護学部, 教授 (30369607)
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研究分担者 |
太田 美智男 椙山女学園大学, 看護学部, 教授 (20111841) [辞退]
佐藤 晶子 椙山女学園大学, 看護学部, 助教 (20593510)
社本 生衣 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 講師 (40593512)
宇佐美 久枝 椙山女学園大学, 看護学部, 准教授 (80587006)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セレウス菌 / 乾燥芽胞 / 芽胞懸濁液 / 繊維成分 / 走査電子顕微鏡 / イミペネム耐性 / 病衣 / 前腕皮膚 |
研究実績の概要 |
我々のこれまでの研究によれば、セレウス菌芽胞は病衣(綿・ポリエステル混紡)の繊維にきわめて容易に付着しやすいことが判明した。また、タオルや病衣の繊維に一度付着した芽胞は次亜塩素酸ナトリウムによる消毒や洗剤などの界面活性剤では全く除去できないことも確認した。さらに、セレウス菌芽胞がポリエステルより綿に多く付着することが示され、繊維の種類により芽胞の付着状況が異なることが示唆された。しかし、これはセレウス菌芽胞の懸濁液に浸してから走査電子顕微鏡で芽胞の付着状態を調べた実験での結果であって、水にぬれたままの病衣を着用することは現実にはあり得ない。そこで水成分の影響を排除する必要があることから、セレウス菌芽胞の乾燥化を試み、乾燥芽胞の作製に成功した。セレウス菌の乾燥芽胞を芽胞染色で調べると、1視野あたりほぼ100%の芽胞が観察された。さらに、乾燥芽胞による繊維への付着実験の方法を確立した。乾燥芽胞による各繊維への付着実験では、綿、ナイロン、アセテート、羊毛、絹、ポリエステル、レーヨン、アクリルの中で、綿やレーヨンには最も芽胞が付着していなかった。それに対して、羊毛、絹、アクリルには多くの芽胞が付着していた。 また、2015~2016年にA県在住の20歳以上の成人約280名対象に、右または左前腕の皮膚(10×10cm)のセレウス菌汚染状況調査を行った。18.6%の被験者からセレウス菌が検出された。また分離菌の中にはイミペネムなどの抗菌薬に耐性菌も見出された。したがって、点滴針挿入時にはアルコール消毒の前にセレウス菌芽胞を洗い除くなどの対策を講じる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々のこれまでのセレウス菌芽胞の繊維への付着実験は、セレウス菌芽胞を滅菌水に懸濁した液に各繊維を浸した後に走査電子顕微鏡で観察して、ポリエステルより綿の方が芽胞が付着しやすい傾向があると結論付けていた。しかし、現実には水に濡れたままの病衣を着用することはあり得ないことから、セレウス菌芽胞の乾燥化を試み、乾燥芽胞の作製に成功した。さらに、乾燥芽胞による繊維への付着実験の方法も確立した。この実験方法により、様々な繊維(綿、ナイロン、アセテート、羊毛、絹、ポリエステル、レーヨン、アクリル)への乾燥芽胞の付着実験を行い、それらの繊維の中で、綿やレーヨンには最も芽胞が付着していなかったが、羊毛、絹、アクリルには多くの芽胞が付着していた。これらの結果から、芽胞の付着しにくい繊維による布を開発するための大きな手がかりが得られた。 また、地域在住の20歳以上の成人を対象に右または左前腕の皮膚のセレウス菌汚染状況調査を行い、健常成人の前腕皮膚がセレウス菌に高率に汚染され、また分離菌の中にはイミペネムなどの抗菌薬に耐性菌も見出された。これにより、入院前から前腕皮膚がセレウス菌に汚染されていることが示唆され、末梢静脈カテーテル挿入時に通常実施されているアルコール消毒では到底不十分であり、追加の感染防止対策を提案するための重要なデータとなる。
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今後の研究の推進方策 |
1.芽胞の付着しにくい繊維で作られた布について、織り方、繊維の細さ・密度、表面加工等の観点からセレウス菌乾燥芽胞の付着実験を行い、芽胞がより付着しにくい病衣などの病院リネンを提案する。 2.各繊維への乾燥芽胞の付着については、セレウス菌の菌株による付着の違いがあることが考えられるため、地域在住の健常者対象に皮膚のセレウス菌の汚染調査を実施して検出された菌株や病院で敗血症を起こした菌株で各繊維への付着実験を行い、より芽胞の付着しにくい布について検討する。 3.地域在住の健常者対象に実施ている前腕皮膚のセレウス菌汚染状況調査を継続して、検出されたセレウス菌の抗菌薬感受性や病原性を調べる。また入院時の末梢静脈留置カテーテル挿入時のセレウス菌感染を防止する対策を提案していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった試薬が発注後に製造中止になったことが判明し、購入することができなかった。代わりの類似品の購入を検討したが、適当なものがなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
各種繊維で織り方の異なる布や防水・撥水加工など特殊加工した布などの購入に充てる。 また実験に走査電子顕微鏡を使用するため、サンプル加工用のオスミウムなどの試薬、コーティング用メタル、試料のせ台などを購入する。さらに、これまでの研究成果をBacillus cereusの国際学会に発表するための旅費の一部とする。
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