本研究は、理論的研究と介入調査の双方を通じて、実践に利用可能な看護組織倫理の理論を提示することを目的としている。すなわち、(1)組織の倫理性:組織のどのような特徴(共有された行動パターンや考え方、コミュニケーションや意思決定の仕方)が、メンバーや組織全体の倫理的看護実践を促進/阻害するのか、(2)その変化:組織の倫理性に関わる諸特徴はどのようにして変化させられうるのか、を示すことを目指す。 計画3年目(最終年度)にあたる平成29年度は、(a) 計画されていたB病院での看護倫理研修プログラムを実施し完了した(前年度からの続き)。(b) 前年度の終わりから平成29年度はじめにかけて、B病院研修対象者への1回目インタビューを行った。(c) 研修後の変化を尋ねるため、平成30年3月にB病院研修対象者へのフォローアップインタビューを行った。 平成29年度には、研究成果として1編の学会発表を行った。真継他「アサーショントレーニングを取り入れた看護倫理研修の成果の組織間比較」(第37回日本看護科学学会学術集会示説)であり、これは、前年度までに行ったA病院とB病院の対象者への質問紙調査に基づいて組織間比較を行ったものである。道徳的感性、看護実践の得点は研修後に低下したが、変化のあった要素は組織間で異なっていたことから、一部の参加者間で、現在のケアに疑問をもつ、患者や同僚とのコミュニケーションが活性化する、等の変化が生じた可能性があると考えられた。今後さらに、何が組織間の違いに影響しているか(経験年数、組織文化等)を検討する必要がある。そのためのインタビューの結果は平成29年度中に発表することができなかったが、近いうちに論文化することを予定している。
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