研究課題/領域番号 |
15K11500
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
長坂 育代 千葉大学, 看護学研究科, 特任准教授 (50346160)
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研究分担者 |
眞嶋 朋子 千葉大学, 看護学研究科, 教授 (50241112)
増島 麻里子 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (40323414)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 実践知 / 知の伝承 / オンコロジーナース / 看護の可視化 / 教育プログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本におけるがん看護の質向上をめざし、日本のがん看護の領域において高い実践能力があると認められたオンコロジーナースの看護の実践内容を可視化し、そこから導かれた実践知の伝承を通して新たな実践知を生み出す教育プログラムを開発することである。 平成27年度は、実践知および知の伝承に関する文献検討を進め、実践知に関する概念および教育プログラムを構成する知の伝承と創発に関する要因について整理した。実践知、経験知、暗黙知、臨床知等の用語の定義を比較したところ、いずれも個人が経験を積み重ねるなかで獲得する知識や知恵に関する用語であったが、これらの用語の捉え方は多様であり明確には区別されていなかった。また、知の伝承と創発に関しては、実践の可視化、リフレクション、フィードバックを含む計画された場づくりの重要性が示唆された。 本研究では、実践知を「関係性のなかでつくりだされるものであり、絶えず動いている現実のなかで、自分なりに共通善の価値基準をもち、個別具体に存在する文脈のなかで、最善の判断・行為をすること(野中, 2012)」と捉えることとし、次年度は、オンコロジーナースの実践知の伝承と創発をもたらす場づくりをいかに行っていくかを検討していくこととなった。 また、本研究では、オンコロジーナースの質の高い看護実践の可視化を目的の一つに挙げている。そこで、専門看護師や認定看護師などのがん看護領域の専門資格を有するオンコロジーナース14名に行った乳がん体験者への看護実践に関するインタビューを本研究の実践知の視点で整理し、オンコロジーナースの看護実践事例としてまとめた。しかしながら、実践事例における看護の質を担保するためには、何をもってそれが最善の判断・行為であり質の高い看護実践と言えるかの基準を明確にする必要があると考えられ、そのための方略については、次年度の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、本研究における実践知の概念および教育プログラムを構成する知の伝承と創発に関する要因を明示するために文献検討を行い、インタビューデータからオンコロジーナースの看護実践の可視化を試みた。実践事例の看護の質を担保するための基準を明確にすることが課題として残ったが、ほぼ当初の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、看護における実践知の効果的な伝承と創発のための場づくりについて最新知見の収集や有識者との意見交換を行い、教育プログラムの対象である臨床看護師の意見も得ながら実践知の伝承に焦点を当てた教育プログラムの構成内容と提供方法について検討する。 具体的には、オンコロジーナースや臨床看護師、研究者等によるエキスパートパネルディスカッションを行い、オンコロジーナースの看護実践から抽出した実践知の妥当性や有用性、および看護における実践知の効果的な伝承と創発のための場づくりについての検討を行う。また、文献検討やエキスパートパネルディスカッションの成果をもとに、教育プログラムを考案し、がん看護学を専攻する大学院生を対象に試行、プログラムを精練させる。最終年度である平成29年は、精練させたプログラムを臨床看護師に適用し、プログラムの評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、学会等でのエキスパートパネルディスカッションの開催を計画している。また教育プログラム開発に向けて最新知見の収集や有識者との意見交換を行っていく予定である。これらのことから、次年度は、旅費や謝金等の費用がかかることが予想され、今年度の経費の一部を次年度に回す必要があると考えた。
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次年度使用額の使用計画 |
パネルディスカッション開催や有識者との意見交換に要する謝金や交通費に使用したいと考えている。
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