本研究は看護師の臨床判断プロセスにおける臨床判断力尺度を開発することを目的とした。Tannerが示したclinical judgment modelの「背景」「予期」「初期把握」「解釈」における臨床判断力の要素を抽出するために、A県内の病院に勤務する専門看護師、認定看護師計8名にインタビューを実施し、得られたデータを質的帰納的に分析を行った。結果、「背景」では38のコードから18サブカテゴリー、8カテゴリーが抽出された。「予期」では11のコードから7サブカテゴリー、4カテゴリーが抽出された。「初期把握」では23のコードから8サブカテゴリー、5カテゴリーが抽出された。「解釈」では19のコードから10サブカテゴリー、2カテゴリーが抽出された。この結果と文献を参考に44項目からなる臨床判断力尺度を作成した。 臨床判断力尺度の信頼性と妥当性を検証するために、全国300床以上の病院のうち300病院を無作為に抽出し、このうち看護管理者の許可が得られた28病院の看護師を対象に自記式質問紙調査を行った。配布数1444、回収数633(回収率44%)であった。このうち尺度に欠損がない610を分析対象とした。探索的因子分析の結果、2因子構造で26項目の下位尺度が抽出された。第1因子は患者の状態を推論する力に関する項目で構成された。第2因子は患者の状態を観察によって初期把握する力に関する項目で構成されており、因子的妥当性が確認された。各因子のクロンバックα係数は0.9以上であり、信頼性が確認された。研究の成果は第6回世界看護科学学会学術集会で発表予定である。
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