本研究の目的は,開発してきた看護実習生-患者役アバタを介した看護コミュニケーション教育支援システムのアバタの表情や視線などの表現性に対するシステムの改良とシステムに既に組み込まれている三人称視点でのリアルタイムな振り返りだけではなく,行為の後の振り返りも実施できるリフレクション機能を付加したシステム開発およびその有効性を検証し,実用化に向けた検討をすることである. 平成29年度は,リフレクション機能を付加したシステムを開発し,評価実験を行いそのシステムの有効性を検証した.コミュニケーション行動を体験的そして客観的に振り返ることができ,また,非言語情報の重要性に気づかせることができるなどシステムの有効性が示された.さらに,実用化に向けた検討として,模擬患者参加型コミュニケーション演習(以降SP演習)への事前導入に向けたシステムの評価実験を行い,システムの有効性を検証した.SP演習後に,システム使用経験あり群となし群によるアンケート調査を実施した結果,あり群の方が,全項目において高い評価が得られた.その研究成果を日本人間工学会誌に論文投稿し原著論文として掲載された.また,開発したシステムを介した二者間のコミュニケーションによる視線の変化を測定するための眼球動作測定装置の選定を行い,装着具が無く被験者に負担の少ないキャリブレーションフリー視線計測装置メインユニットEMR-ACTUSを購入した.この視線計測装置を使用し看護学生と模擬患者とのロールプレイングによるコミュニケーション実験を行ない,視線行動をリフレクションすることの有効性を検証した.今後は,研究データの詳細な分析を行い,その研究成果を国内外に報告していく予定である.
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