研究課題/領域番号 |
15K11518
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研究機関 | 愛媛県立医療技術大学 |
研究代表者 |
徳永 なみじ 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (90310896)
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研究分担者 |
相原 ひろみ 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 助教 (10342354)
佐川 輝高 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 助教 (90162320)
金澤 知典 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (50777133)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己調整学習 / 授業時間外学習 / 基礎看護技術教育 |
研究実績の概要 |
筆者らは看護学生の自己学習力の向上に向けて,自己調整学習サイクルモデルを活用した学習支援システムの構築を目指している.第一段階として,導入前の授業時間外学習の現状分析と課題の明確化を目的として取り組んだ.期間はH27年10月1日~8日、H28年10月6日~14日.対象技術はバイタルサイン(血圧測定).対象はH27年度・28年度1年次生150名. 方法 無記名質問紙.調査内容:自己調整学習方略尺度、達成目標尺度、特性的自己効力感尺度、独自項目、練習時間と場所、練習時の工夫(自由記述).授業は、講義1コマ、グループ演習2コマ、教員による技術確認を含む演習1コマの計4コマで構成している。講義終了後を時間外学習前、4コマ目の演習終了後を時間外学習後として前後比較をした(Student t-test, P<0.05).自由記述は類似性で分類した. 結果 自己調整学習方略尺度のモニタリング方略と、達成目標尺度の修得志向が授業時間外学習後に有意に高くなった(t=2.156:p=0.032,t=2.280:p=0.024)自己効力感と独自項目得点に有意な差はなかった.練習時間は平均75.7±47.3分で主な場所は基礎実習室であった.練習時の工夫は「練習を繰り返す」「友人とともに練習する」「他者のアドバイスを受ける」等12項目が明らかになった. 考察 自己調整学習支援システム導入前の時間外練習時間は,1週間に平均約75分でばらつきも大きく十分とはいえない.自己調整方略尺度得点の比較で,自己の技術を振り返るモニタリング方略は高くなっているものの,プランニング方略,認知的方略,努力調整方略は変化していない.このことから,計画的に練習する,時間を調整するなどの力に成長の余地があり,当システム開発によりさらに技術連取への取り組みが向上する可能性が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己調整学習支援システムは、当初の計画通りハード面、ソフト面ともに整い、平成29年度にはシステム導入後1年目のデータを収集することができた。次年度のデータを合わせて、システム導入後の結果を分析し、今回報告した導入前の結果を比較する予定である。導入したシステムは、不具合もなく、学生が捜査に困ることもなく、授業時間外学習を促す学習ツールとして無事に授業に組み込むことができている。1年目のデータについては、詳細な分析は今後行っていくが、自由記述について概観したところ、台数が少ない等の運用上の課題が明らかになっており、本研究終了後も引き続きシステムをブラッシュアップする余地を残している。また、今回対象とした技術は血圧測定であったが、授業では他のバイタルサイン測定技術と一緒に学習するため、最終的な成果分析時には、バイタルサイン測定技術として分析・考察する必要があることが示唆された。また、実習での血圧測定実施経験への影響についても、可能であれば分析していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
前にも述べたように、平成30年度10月が最終のデータ収集となる。システム導入前2年間、導入後2年間のデータを比較し、システムの導入が学生の自己調整学習力の習得や時間外学習、実習での実践にどのように影響したか、導入自体が学生の自己調整学習力の育成に効果があったのかについて検討していく。システム導入の前後比較については、尺度得点の前後比較のみではなく共分散分析を行い、自己調整学習方略と自己効力感の関係、達成目標と自己調整学習方略との関係などについても分析する。また、今回用いた自己調整学習方略の項目は、勉強を練習に読み替えていることから、因子分析により、下位項目の妥当性などについても確認する必要がある。 4年間をかけて遂行してきた研究であるが、年を追うごとに学生からの忌憚のいない意見や、今後の発展への期待が寄せられ、学生にとって必要とされる研究であることを実感している。 世界的にICTの教育への利活用が進む中、看護をはじめとする医療系大学の学生の教育には、まだその恩恵が十分に行き渡っているとはいいがたい。今回の研究の成果をもとに、より効果的で効率的、魅力的な学習支援システムを開発・発展させたい。それにより、過密であるがゆえに時代に合わせた変容が停滞している看護教育を活性化し、地域包括ケアシステムを基盤とする新しい看護の場で活躍できる看護職を育成していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学業務の都合で、参加予定であった学会に参加できなかった。
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