研究課題/領域番号 |
15K11525
|
研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
太田 祐子 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (70349778)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 看護職 / ジェネラリスト / キャリア / 物語 / ナラティブ / ライフ・ストーリー / キャリア中期 / 中高年看護職 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、キャリア中期のジェネラリスト看護師のキャリアを、当事者(研究参加者)と協働的に物語として可視化すること、その蓄積からキャリアおよびその認識・描出に影響をもたらす背景について探ることである。 平成27年度は初年度にあたり、主に目的に近づくための土台作りを行った。すなわち、 1.当該領域の研究動向や最新の知見の獲得のために、文献の収集と整理・検討および学術集会の参加や専門家・当事者とのディスカッションを通して以下の点を確認・明らかにした。(1)キャリア中期看護師のキャリア発達について、現在の臨床現場での課題の蓄積およびその認識がされてきたこと。(2)女性が多数を占めるキャリア中期看護師は、結婚・出産・子育て等、ライフイベントが多く負荷の高い年代であり、キャリアの物語にも密接に関連していること。(3)キャリア中期のジェネラリストは、安定を求めたり一部停滞しているように見受けられるが、組織からの期待や要求が高く仕事の達成感を得ることが難しく、踏み出すきっかけを模索していること。(4)看護を語る会を実施することで当事者が変化していくという報告がみられる様になり、ナラティブ・語りの有用性が認められつつあること。(5)語りやライフストーリー生成における語り手・聴き手の相互関係による意味づけはもとより、齟齬の自覚とその多声性が、研究者の一方的な解釈への陥りから回避する可能性として指摘されていること。 2.データ収集およびキャリア中期ジェネラリスト看護職への具体的な働きかけとして、個別的・継続的な語りを得るためのナラティブ・インタビューの機会、ならびに集団的にキャリアを語る当事者の会を開催するため、倫理的配慮を含めた具体的な方法の検討、研究参加者獲得方法の検討やその可能性など、準備を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は初年度にあたり、研究推進のための地固めに時間をかけた。そのため、実際のデータ収集への着手やウェブサイトの開設など、計画を次年度に持ち越した。 研究協力者候補へのアクセスについては、研究協力者の要件から交代制勤務についているものが多く連絡が取りにくいことがあった。しかし一部内諾を進めているなど、次年度に遅れを取り戻すことは十分に可能と考えている。 またウェブサイトの公開にあたり、セキュリティへの万全な対策が必要であり、これを講じた上で次年度の早い時期に実施し研究協力者獲得へつなげて行く。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究の推進では、以下を予定している。 1.データ収集と物語の再構成・描出を進める。これまで研究代表者の研究に協力を得ていた研究参加者と、再び語りの機会を設け、これまで記された物語としてのキャリアを踏まえつつ、その後のキャリアや今後の展望について自由に語ってもらう。また、新たに参加者を募り協力を得て、同様に語りの機会を継続的に設ける。語りの場では、語り手と聴き手の相互行為を前提とするナラティブ・モデルに基づき、語り手の安全を確保しつつ、聴き手の存在を肯定し、時に聴き手の意見も織り交ぜながら行う。語りは許可を得て録音し、逐語化されたデータ及び音声データから、キャリアに関する記述を抽出し、物語を再構成していく。 2.キャリア支援実践としてキャリアを語る当事者の会を催し、その効果を検証するためのデータを得る。そのために、当事者の会の開催方法について引き続き検討を続けるとともに、実施についての協力者および参加者の確保を行う。実施協力者については、看護管理者経験のある看護教育に携わる者等を想定している。参加者については、ウェブサイトを公表したり、キャリア中期のジェネラリスト看護師が多数在籍する病院を頼りにチラシを配付したり、研究参加経験者からの雪だるま式サンプリングにより、獲得していく。 3.ウェブサイトを作成・公開し、研究内容を周知しながら、研究参加者を獲得していく。 4.前年度に引き続き、国内外の研究動向や最新知見の獲得を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ウェブサイトの公開が遅れたため、支出の予定を次年度に持ち越した。またデータ収集における費用(テープ起こし等)について取り扱いを次年度に持ち越した。 The 4th International Nursing Research Conference(Germany)への参加を本務の都合もあり見送ったため海外旅費の執行を持ち越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
これまでの計画では、平成28年度分として70万円を使用する予定であった。しかし平成27年度で執行できなかったウェブサイトの公開やデータ収集における費用(テープ起こし)他が未使用分として約50万円あり、平成28年度ではこれら合計120万円の使用を計画している。 すなわち、消耗品費30万円(プリンタ給紙トレイ、トナー、文具類他)、旅費15万円(データ収集および学術集会参加旅費等)、謝金15万円、その他60万円(テープ起こし代35万円、当事者の会開催等のデータ収集に伴う費用5万円、ウェブサイト作成・公開費用15万円、通信費3万円、他)の使用を予定している。
|