研究課題/領域番号 |
15K11526
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
森田 夏実 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (90229310)
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研究分担者 |
瀬戸山 陽子 東京医科大学, 医学部, 講師 (20649446)
和田 恵美子 京都学園大学, 健康医療学部, 准教授 (70293818)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 病い体験の尊重 / ナラティブ(語り) / 医療者教育 / VTR教材 / 教育プログラム / ウェブサイト / 患者参画 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、語りのデータベースの二次分析により患者が病いとともに生きている経験を尊重できる医療者の育成に資するため、患者・患者体験者が参画して「患者の病い体験の語りを用いた医療者教育プログラム」を作成し、ウェブサイトを構築、評価することである。 教育プログラムのねらいである「患者を、病いとともに社会生活の中で生きている一人であり全体的な存在としてとらえることができる」に基づいて、前立腺がんの患者1名を選択し、病気の診断まで2年以上かかった事例としてVTR 教材化した。認知症患者・家族から1組を選択し、患者本人の認知症の体験および家族の経験のVTR教材を作成した。 VTR教材を使用したパイロットスタディは7件実施し評価した。内訳は昨年度作成した乳がん患者の語りを医学部で1件(患者学)、前立腺がんは医学部1件(公衆衛生学講座)と看護学部2件(成人看護学、看護情報学)、大学院修士課程看護学研究科1件(看護学研究方法論)、認知症の語りは薬学部1件(患者心理とカウンセリング)と歯学部1件(行動科学基礎)である。患者・家族の病い体験の認識を新たにし、一人の患者の病い体験をじっくりと視聴することにより病いの軌跡に対する多様な気づきが得られ、学生間で共有できた。概ね本教育プログラムのねらいが達成されたと評価した。 学会発表、展示ブース設営(第48回日本医学教育学会)、交流集会開催、模擬授業の実施等、本教育プログラムの周知をはかった。本教育プログラムの多様な活用法の発展のため、教育的活用ワークショップ(東京)を開催、シンポジウムでは患者の語りから学ぶ事の重要性について発表した。これらを通して今後の活動への意見交換を行った。医療者/医療系学生を対象とした語りの教育的活用についてレビュー論文を投稿中である。 VTR教材使用の教育プログラムについて国際会議で発表し今後の活動に関する示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の特徴は、研究者のみならず患者本人や患者体験者が参画して教材を作成することであり、乳がん、前立腺がん、認知症の語りのデータベースのすべてを読み直して、これまで3本のナラティブを用いた教材を作成した。これらを使用して、様々な医療者教育を展開し、個々の評価を積み重ねてきている。最終目標としては、これらの教育プログラムについて効果的に活用できるウェブサイトを構築し評価することである。 目的の達成度として、教材作成については、計画通り進んでおり、教材を使ったパイロットスタディ(授業・研修等で使用し、評価)も順調に進めている。ウェブサイトについては、今年度内の公開を目指していた。今年度は、ウェブサイト構築に向けてコンサルティングを受け、テストサイト作成した。公開には至らなかったがテストサイトが作成され最終段階の完成を目指しているので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更はない。乳がん・前立腺がん・認知症の語りのVTR教材の使用に加えて、現在作成中の医療者と患者とのコミュニケーションに焦点を当てた教材を完成させ、実際に授業、研修等で使用する予定である。研究の最終年度のため、映像で視聴できる患者の語り(ナラティブ)を用いた教育プログラムの活用とその評価、教育的活用に関するウェブサイトを公開し、その評価を行っていく。引き続き国内外での成果の普及・広報活動も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウェブサイト構築については、内容の検討に時間を要し、ウェブサイト構築に使用する予定であった研究費の一部を繰り越したが、既にコンサルテーションを受け、公開に向けてテストサイトを作成し、最終的な内容、インターフェイス等の検討を行っている。最終年度であるためウェブサイトを公開し、その評価を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
国外出張(DI)55万円、国内旅費15万円、ホームページ作成/調査50万円、会議費(ワークショップ会場費等)2万円、人件費・講師謝金15万円、学術集会参加4万円、消耗品(文具/書籍等) 4万円、報告書印刷費5万円
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