研究実績の概要 |
看護技術教育に導入するコオーディネーショントレーニング方法の開発を、アンプルカット技術に焦点を当てて検討した。対象者は、注射技術を未履修の看護系大学1年生9人とした。方法は、準実験研究とし、注射技術の演習を担当している看護教員がアンプルカット方法を通常の授業と同様に説明した後、アンプルカット技術を実施してもらい、コオーディネーショントレーニング前後で比較した。また、看護技術の自信に対する自己評価もコオーディネーショントレーニング前後で比較した。トレーニングは、基本的なコオーディネーショントレーニングである「くの字」「Sの字」「ラディアン」「寝返り立ち」(荒木,2008)とアンプルカット技術に特化した「割箸折り」を実施した。「割箸折り」は、1本の割箸の中央部分につけた印の位置で割箸を折ることができるように、割箸の両端から力を加えるという方法で行った。 結果、アンプルを構えてからカットまでに要した時間は、トレーニング前が平均3.85(±1.8)秒、後が2.45(±0.6)秒で、トレーニング後が有意に短縮された(P>0.001)。また、トレーニング前にアンプルカットまでに要した時間が6秒台であった3人の学生が、トレーニング後にはいずれも2秒台となり、著しく時間が短縮した。この3人の学生に共通していたのは、「くの字」「Sの字」などの基本的なトレーニングにおいて、ふらつきやリズムに合わせられない場面が多く、コオーディネーション能力の低さが観察されていたことである。看護技術の自信に関する自己評価では、「難しい課題を与えられても練習すればできると思う」のポイントがトレーニング後に有意に上昇した(P>0.5)。 実施したコオーディネーショントレーニングでアンプルカット技術の向上に一定の成果を認めたが、元々コオーディネーション能力が低い学生には、より顕著な効果を得られることが示唆された。
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