研究課題/領域番号 |
15K11539
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
辻 慶子 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (60336188)
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研究分担者 |
萩原 智子 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (20746549)
鷹居 樹八子 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (40325676)
児玉 裕美 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (80584515)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 仮想病棟 / 療養環境 |
研究実績の概要 |
快適な入院生活を過ごすとともに安全で確実な医療行為を行うには,医療施設の環境デザインの適切さが求められる.基礎看護学の単元「環境」の授業では,医療施設,とくに病棟のイメージがつかないまま環境の学習をする看護学生が多く,その理解が不十分で患者の援助に繋がらないことが多く見受けられる.建築用コンピュータソフト(ウインドウズ8)上で動作する「3DマイホームデザイナーPro8」を利用し,医療施設において患者に最適な療養環境としての環境デザイン学習の可能性を検討するために,平面図上の医療施設を作り3D画像に変換した後,コンピュータの画面上で病棟内を疑似歩行体験できる仮想病棟動画を作成した.動画は, a)「病室」の壁の色彩を変化させたもの, b)「病棟配置」はナースステーションの位置と病室の配置の違い,c)「視力の低下を体験できる外来」では白内障による視力低下で視界がぼやけてみえる外来の3種類からなる.対照群は静止画群を動画と同様に(a,b,c)の3種類作成した.c)の静止画については説明書付きとした.作成した動画と静止画について看護師と看護学生にアンケート調査を行った。その結果,a)の動画・静止画において両者の視聴後の感想に差はみられなかった.またb)の動画は,看護師と看護学生の記述内容に違いが見られなかった.臨床経験のない看護学生は動画により病棟内を歩く疑似体験を通じて,視覚的・体験的に病棟の環境を理解できたと考える.c)の動画は,看護師・看護学生とも患者の視点での記述が多かった結果から,看護教育において仮想病棟動画の活用は疑似体験ができることで,学生の準備状況に合わせた教育プログラムの作成が可能であることが推察できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床経験のない学生は臨床場面を想定することが困難で,看護基礎教育と臨床との乖離があり,臨床現場での戸惑いが大きい.そのため看護基礎教育においては臨床に即した教育を行なうことが課題である.今後は、看護学生が、安全や安楽を考慮した環境調整の在り方を考える要因として、高齢者の捉える病棟と看護学生が捉える病棟の安全・安楽の視点の違いを明確にする。そのために高齢者への仮想病棟のアンケート調査を行う予定である。さらに、病棟における患者の事故が多い「浴室」や「夜間」の環境,心理面から考えた「壁紙」などの環境についても仮想病棟の動画を作成し,疑似体験を通して看護基礎教育の充実をはかる.それにより,看護基礎教育と臨床の実際との乖離の減少につながると考えられる. また、患者は入院中の生活や検査においても仰臥位をとることが多く、その場合、もっとも長い時間視野に入るのは病院の天井である。しかし、どのような天井がより患者に安心感をもたらすかを調べた研究はほとんど見られない。そこで、コンピュータを用いて天井の色と模様を変化させた静止画像および視線を天井に固定させた仮想病棟動画を作成し、臨床経験のない看護学生において患者の視点にたった病院の天井のもつ意味をどのように理解することができるかを試みる。静止画像と動画の製作については、ウインドウズ8(マイクロソフト社)上で動作する『3Dマイホームデザイナー・プロ8(メガソフト社製)』を用い、コンピュータの画面上で外来または病棟の静止画像および疑似歩行体験用の動画を作成する予定である。静止画像は(1)天井の色彩(白色、木の色、草の色、空の色)、(2)天井の画像(抽象画、人物像、窓と空の絵)、(3)待合室、検査室、病室の違い、の三つの組合せとする。疑似歩行体験用の動画は外来において待合室から検査室までストレッチャーで移動する患者の視点を作成予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定をしていた「3DマイホームデザイナーPro8(メガソフト社製)」が、新しい商品がでなかったことで、当該年度の予定していた額に差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会での発表を予定していることから、昨年度の差額を旅費に当てる予定である。
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