目的:日本では、多くの訪問看護師が夜間でも携帯電話を持参し、療養者からの緊急コールに対応する「オンコール勤務」に就いている。本研究の目的は、療養者からのコールによる睡眠の中断が無い場合の、オンコール勤務による就寝前の心拍変動および睡眠への影響を明らかにすることであった。 方法:31人の訪問看護師(平均年齢49.8歳、標準偏差6.3歳)を対象とし、オンコール担当日と非担当日を含む4-5日間、自宅で就寝前に2.5分間の安静時心拍変動を測定、ワンチャンネルの睡眠脳波計により睡眠時脳波を記録、翌朝覚醒時に主観的睡眠評価(OSA睡眠調査票)を実施してもらった。オンコール担当日と非担当日の心拍変動解析値(HR、SDNN、RMSSD、LF、HF)、睡眠変数(睡眠潜時、総睡眠時間、ノンレム睡眠割合、レム睡眠潜時、中途覚醒時間、睡眠効率)、主観的睡眠評価(起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復感、睡眠時間)のデータを統計学的に比較した。オンコール担当日と非担当日のデータは、各対象者の最も最近の測定値を使用した。 結果:オンコール担当日と非担当日では、心拍変動解析値および睡眠変数に差はなかった。起床時眠気および疲労回復感の得点はオンコール担当日で有意に低かった(P<0.05)。特に、51歳以下の訪問看護師のオンコール担当日の起床時眠気の得点が低く、交互作用が有意(P<0.05)であった。 結論:訪問看護師のオンコール勤務は、心拍変動および睡眠構造に影響を与える要因とは考えにくかった。しかし、主観的な睡眠の質には悪影響を与える可能性があり、比較的年齢の若い訪問看護師ほど、オンコール勤務による負担を強く意識していることが示唆された。 本研究の一部を2017年8月一般社団法人日本看護研究学会第43回学術集会で発表した。論文は現在投稿中である。
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