研究実績の概要 |
災害が頻発しており、また、近い将来に予測されている巨大地震に備えるためにも、国、地域、個人を含む各レベルにおいて、備えの行動化が課題となっている。なかでも、急激な環境の変化に脆弱である妊婦については、健康の観点からより一層の備えが必要である。そこで、本研究では、妊婦を対象とした災害に備えるための教育プログラムを開発し、その効果を検証することを目的とした。 開発したプログラムは、災害への備えに関する知識の提供、その知識を活用した演習、自宅での実施、実施した取組み内容に関する情報交換と共有、夫婦での参加、から構成されていた。介入研究のデザインは、ランダム化併行群間比較試験であった。教育プログラムの効果として、災害への備え行動ならびに知識の変化を質問紙により測定した。介入群にはプログラムを提供し、対照群にはプログラム内で使用する冊子を配布した。 合計3回の調査を完了した研究協力者は介入群が21名、対照群が40名であった。その結果、災害への備え行動(35項目)、備蓄品ならびに持出物品の数の変化は、対照群より介入群に大きく、有意差が認められた(p<.01~.05)。さらに、これらは介入3カ月後にも増加していたことから、介入効果は少なくても3カ月間は持続することが明らかになった。重回帰分析の結果では、備え行動(35項目)の変化に対し「プログラムの受講」が最も強く(β=.571,p=.000)、本プログラムが災害への備え行動の促進に有効であることが実証された。 さらに、介入群の語りを質的分析した結果では、プログラムへの参加を通して災害への備えを「自分ごと」として捉え、将来の災害に対する不確かさはあるものの、それを受け入れ、「自分たちにできることはする」と決めて取り組んでいたことが明らかになった。
|