研究課題/領域番号 |
15K11572
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
松清 由美子 久留米大学, 医学部, 講師 (60587468)
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研究分担者 |
中尾 久子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80164127)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害救援看護者 / 災害救援活動 / ストレスコーピング / 東日本大震災 / 構造化モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、災害救援看護者の救援活動におけるストレスの認知的評価から活動後の感情の変化、長期にわたる適応・不適応に至るまでのプロセスを構造化することを目的とした。 研究対象は、東日本大震災の被災県以外から被災地に入った535名の災害救援看護者であり、構造モデルは、Lazarus & Folkmannのストレス理論を基に、ストレスの認知的評価、活動後の感情の変化、適応・不適応の3段階に分け、各段階に影響を及ぼす要因を設定しSEM(Structural Equation Models with observed variables)を用いて作成した。 構造モデルの内生変数の関係はストレスの認知的評価と活動後の感情の変化、活動後の否定的感情と長期にわたる不適応は強い関連が認められた。外生変数は、ストレスの認知的評価には性別(女性)(β=1.31)、婚姻(既婚)(β=1.23)、救援活動の時期(発災後2週間以内)(β=0.25)、避難所での活動(β=0.95)、問題焦点型対処行動特性(β=0.21)であり、活動後の否定的感情には、正当な他者評価(β=-0.22)、活動中の対処行動(冗談を言って笑う)(β=-0.13)であり、長期にわたる不適応には、否定的な自己評価(β=0.97)、情動焦点型対処行動特性(β=0.39)であった。構造モデルの適合度は、CFI=0.888、RMSEA=0.064、SRMR=0.036であり、一定の基準を満たしており臨床的にも有用であり活用可能であると判断できる。Lazarus & Folkmann(1984)のストレス理論を基に作成した構造モデルを概観したとき、救援活動後の不適応には、被災地でのストレスの認知的評価と、活動直後の否定的な感情が強く影響していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度計画であった災害救援看護者の活動に伴うストレスの認知的評価から対処行動、活動後の感情の変化や現在の心理(適応・不適応)状態及びそれらに影響を及ぼす要因や関連を明らかにしたうえで、そのプロセスの構造モデルを作成した。現時点において、当初の計画通りに研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
災害救援活動に伴うストレスやその後の心理状態など、複雑な人間の行動や心理状態を構造化するためには、質的研究による複数の側面についての洞察が重要である。よって、昨年度に作成した構造化モデルの妥当性を高めるため、量的データと質的データの統合が必要である。 その為、今年度は東日本大震災以降に発生した地震以外の災害(風水害、土砂災害等)で救援活動に従事した看護者を対象に半構成的面接調査にて、質的データ収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、研究成果を海外の学会誌に投稿する予定で翻訳代及び英文校正費を計上していた。しかし、論文作成が次年度にまで及んだため、当該年度の使用額が予定よりも少なく次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
海外学会誌への投稿のための翻訳代及び校正費、次年度研究計画に予定している質的データ収集のための交通費及び人件費、謝金を計画している。
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