研究課題/領域番号 |
15K11577
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大津 美香 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (10382384)
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研究分担者 |
森山 美知子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (80264977)
高山 成子 金城大学, 看護学部, 教授 (30163322)
渡辺 陽子 (半田陽子) 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 助教 (20364119)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 慢性心不全看護 / 認知症看護 / 疾病管理 / 看護援助プロトコル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、慢性心不全の急性増悪期にある認知症患者に生じやすい、治療やケアの拒否・中断を防ぎ、入院中の疾病管理を円滑に行うために有用な看護援助プロトコルを開発することである。平成28年度は、平成27年度に先行研究を基に作成した原案を研究チーム間で協議し、原案の修正を行った。本修正原案を用いて内容妥当性について、慢性心不全の急性増悪期にある認知症患者の看護経験のある慢性心不全看護認定看護師7名及び認知症看護認定看護師14名にインタビュー調査を行った。その結果、認知症だけではなく、一般高齢者においても慢性心不全の急性増悪期にはせん妄が発症しやすい状況にあり、急性増悪期に対応が困難になる原因は認知症だけではないことも多かった。また、認知症の診断もされていないケースも多い状況にあることがわかった。そのため、テーマを「慢性心不全の急性増悪期にある認知症/認知症疑い/せん妄発症リスクのある高齢患者の円滑な治療・ケアに向けた援助方法の標準化」とすることが妥当であると考えた。本結果を受けて、看護援助プロトコルの実施対象を入院時に認知症のある高齢患者に限定することは困難であることから、平成29年度の看護援助プロトコルの予備調査では、対象を認知症患者に限定せず、慢性心不全の増悪期にある高齢患者全般を対象とすることが妥当であると考えられた。認知症の重症度や種類についても、診断されていることが少なく、認知症の重症度別、種類別の対応方法を検討することは困難であることがわかった。看護援助プロトコルの構成としては①入院初期の対応、②治療開始後の対応、③回復過程における対応に分類しまとめていくことが提案された。①では本看護援助プロトコル実施の対象であるかどうかをスクリーニングするためのアセスメントが必要になる。②③では回復を妨げられそうになる治療・ケアの優先順位が高い順に対応できるよう作成していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
修正原案を用いて内容妥当性について、慢性心不全の急性増悪期にある認知症患者の看護経験のある慢性心不全看護認定看護師7名及び認知症看護認定看護師14名にインタビュー調査を行い、予定通りに調査を終了した。また、インタビュー内容の逐語録の作成を研究協力者に依頼し、完成した。しかし、意味内容の分析及び分析結果を看護援助プロトコルへに反映させることについては、10名分のみの実施に留まっている。意味内容の分析には対象者1名あたり2時間分の発言内容量があり、当初予定していたよりも、膨大な時間を要している。インタビューの調査者が本作業を行うことが、より信頼性の高いデータとなると考えているため、調査者1名が残り11名分の作業を完成させるには、約3カ月程度を要すると思われ、早期に進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
インタビューから得られたデータは、看護援助プロトコルの内容妥当性のために用いているが、テキストマイニングを用いた分析により慢性心不全看護認定看護師と認知症看護認定看護師がプロトコルの改善に向けて重要と感じている内容・単語の出現頻度や出現傾向を比較検討することも考えていた。しかし、発言内容のリスト作りには時間を要するため、プロトコルの修正を優先して作業を進めていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はインタビュー調査対象を増やす必要性があったことから、旅費や謝金などの増額が見込まれ、前倒し請求を行っていた。しかし、対象者との早めの日程調整により割引サービスを使って旅券を購入したり、研究チームメンバー間の会議を対面ではなく紙上で開催する等、経費の削減に努めることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内において開催される認知症に特化した国際会議においてプロトコルの修正案についての演題発表を行い、認知症の当事者や研究者からの意見を得るための会議への参加費用に充てることを計画している。また、データ分析のための最新のソフトの購入費用に補填することを計画している。
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