研究実績の概要 |
【目的】2型糖尿病性腎症患者の腎機能悪化に関与する「療養認識パターン」は、3つに分類ができることを見出した。今年度は、パターンの一つである「高肯定感パターン」は、1年経過後及び2年経過後、腎機能悪化を阻止することを確認した。 【方法】対象は、A県の総合病院に外来通院中の2型糖尿病性腎症(2~4期)患者で、初回の調査及び1年後の調査に協力が得られた26名であった。調査内容及びデータ収集方法は、1.身体状況(腎機能);腎症期、Hb,HbA1c,BP,尿中Alb,尿中P,Cr,GFRを診療記録から収集し、2.療養状況(セルフケア実行度);食事・運動・薬物実行度は自記式質問紙、3. 療養認識パターン;「療養認識パターン尺度」を用いた。分析方法は、「高肯定感」と他の2つの認識パターンの患者のデータとの比較を行った。腎機能はCKD重症度分類を用いた。 【結果】1.初回の療養認識は、「高肯定感」13名、「現実逃避」6名、「原因不明感」7名であった。2.1年経過後及び2年経過後の「高肯定感」の維持は1名を除いた12名(92.3%)が維持していた。1名は「原因不明感」への変化であった。3.腎機能悪化の阻止は1)高肯定感で維持は10名(74.5%)であり、悪化は2名(25.5%)であった。2)他の2つの認識パターンとの比較では、「現実逃避」は維持2名(33.3%)、悪化が3名(50.0%)であった。「原因不明感」は5名(71.4%)が維持、悪化が2名(28.6%)であり、「高肯定感」「原因不明感」「現実逃避」の順に維持率は高かった。3)食事・運動・薬物の実行度は、合計の平均点は「高肯定感」11.6点、「原因不明感」11.4点、現実逃避10.2点の順に高かった。 【考察】療養認識パターンの「高肯定感」は、腎機能悪化を阻止する割合が他の認識パターンより高く、療養行動の実行度も高いことが確認された。
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