研究課題/領域番号 |
15K11582
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
師岡 友紀 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (40379269)
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研究分担者 |
吉村 弥須子 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (10321134)
梅下 浩司 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60252649)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体ドナー / QOL / 生体肝移植 / フォローアップ |
研究実績の概要 |
生体肝ドナーの長期的なニーズを把握する目的で、ドナーの診療録を用いた調査を行った。その成果を学会発表3件として報告した。明らかになった点として、術後1年目受診時の患者の訴えとして、創症状あり(16.0%)、消化器症状あり(10.5%)であった。また、術後の長期的な問題として脂肪肝発症の実態と関連要因を検討したところ、脂肪肝は5.8%の対象に発生し、性別(男性)・手術時年齢(若年)・術前の脂肪肝(有)・術後の体重変化(大)が関連していることが明らかになった。さらに術後の受診率とフォローアップ率(年1回以上の受診を行っている程度)を検討したところ、1年目の受診率は90.2%であったが3年目には44.7%と半減していた。加えて、年齢が高く術後経過年数が少ない方がフォローップ率が有意に高かった(P<0.0001)が、成人間と小児移植の差異、レシピエントの予後では有意な関連が認められなかった。 これらの結果から、生体肝ドナーの術後の長期的な問題として、創症状・消化器症状・脂肪肝などあり、5~20%程度のドナーが課題を抱えていることや、長期的な健康管理に関わる支援が必要であることが示唆された。ただし、受診率は年々下がるため状況を正確に反映していない点に注意が必要である。前提としてドナーのフォローアップを十分に行う必要があり、そのためには、ドナー自身への支援に加え、フォローアップを高めるシステムの必要性が示唆される。そうしたシステムにより、ドナーからのフィードバックを適切に得ることができ、さらにドナー候補者への情報提供にもつながると考えられる。 したがって、当初検討していた相談システムだけでは不十分であり、ドナーのフォローアップを継続でき、かつドナーの体験を収集できるようなシステムを検討していく必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
成果発表は行うことができたが,その後の相談システムの開発に時間がかかっている.理由は、研究協力者との検討の中で、当初の相談システムの問題(倫理的問題、長期的な活用可能性やシステムの意義が不十分であることなど)と、調査の結果や最近の研究報告から、フォローアップ率を高めることやドナーの長期的な予後をドナー候補者の意思決定につなげるシステムの必要性が明らかになりつつあるためである。したがって、計画を変更し、単なる相談システムではなく、ドナーの体験を収集し将来的にそれを意思決定のための情報として利用可能なものとする方向に転換していくのが良いと考え修正を図っている。 また、私事ではあるが、産後の育児のため十分に取り組む時間を確保できていないことも大きく影響している。
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今後の研究の推進方策 |
計画を変更し、単なる相談システムではなく、ドナーの体験を収集し体験の共有を通した支援を行うとともに、将来的にドナー候補者のための意思決定のための情報として利用可能なものとする方向に転換していく。システムとして構築するホームページの内容やあり方を再検討し、将来的に、術前から術後を通して、ドナーとドナーになることを検討している候補者の両者の支援に利用可能なものを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
システム開発が遅れているため使用できなかった予算を確保しておく必要があったため。
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