研究課題/領域番号 |
15K11591
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
澄川 真珠子 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (20432312)
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研究分担者 |
斉藤 重幸 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (60253994)
澄川 靖之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00555526)
赤坂 憲 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (70468081)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 神経障害 / 神経伝導速度 / 振幅 |
研究実績の概要 |
平成28年6月9日~平成29年3月31日まで産前産後および育児休業を取得していたため、平成28年4月1日~6月8日に実施した内容について報告する。 平成27年度より神経電導検査装置DPNチェック(HDN-1000)を用いて、糖尿病患者の純感覚神経である腓腹神経の神経電導速度(CV)と振幅を測定することにより、神経障害の評価指標になりえるかについて検討してきた。今年度は、平成27年度にデータ収集した76名152に加えて、27名の症例を追加して分析を行った。 糖尿病患者103名(男性62名)、65.7歳、糖尿病歴13.9年、HbA1c7.3%、BMI24.3kg/m2、身長161.5cm。206肢のうち測定できたのは、CV;194肢49.1±6.6m/s、振幅;196肢9.8±7.7μV。CVは、男性で低く、身長と負の相関を認めたが、年齢による有意差は認めなかった。また、CVは、しびれの自覚症状有、ATR低下、触圧覚低下、胼胝、白癬症、血糖コントロール不良、重度網膜症・腎症の患者で有意に低値であった。一方、振幅は、高齢、ATR低下、触圧覚低下、振動覚低下、網膜症の患者で有意に低値であった。神経障害重症度は、正常112肢、軽度49肢、中等度32肢、重度10肢であり、しびれ・感覚鈍麻の自覚症状有、ATR低下、触圧覚低下、足背動脈触知不良、重度腎症の患者で重症度の高い人が有意に多かった。 DPNチェックで測定したCV・振幅は、足病変や他の神経障害評価指標と関連を認めた。また、DPNチェックで判定した神経障害重症度は、他の神経障害評価指標、糖尿病合併症、一部の血管障害指標との関連を認めたことから、足潰瘍発症リスクを客観的に把握するツールとして有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度、28年度に予定していた、糖尿病患者にDPNチェックを用いた神経障害の評価を実施することができ、データ収集は103名であることから目標症例に達成することができた。DPNチェックで測定したCV・振幅は、足病変や他の神経障害評価指標と関連を認めたこと、DPNチェックで判定した神経障害重症度は、他の神経障害評価指標、糖尿病合併症、一部の血管障害指標との関連を認めたことから、足潰瘍発症リスクを客観的に把握するツールとして有用であると考えられた。 平成28年度からは実臨床でのフットケア介入継続において神経障害評価を行う予定であったが、平成28年6月9日~平成29年3月31日まで産前産後および育児休業を取得していたため、実施できていない。1年間の補助事業延長が承認されているため、平成29年度に実施を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までに収集したデータについて詳細な検討を加え、論文投稿を行う。 さらに、平成29年度からは、足潰瘍発症リスク別のフットケア内容を提示することを目的に、フットケア外来通院中の糖尿病患者に対してDPNチェックを用いた足潰瘍発症リスク評価を行い、継続的定期的にフットケア介入を行う。目標症例数は30症例である。 初めに、本研究で作成した足潰瘍発症リスク分類を使用して、足潰瘍発症リスクを評価する。以降は、リスクに応じた介入頻度で定期的に看護師によるフットケア介入を継続する。介入内容は、①糖尿病足病変について情報提供②ニッパー、フットケアマシンなどのフットケア機器を用いて、爪切り、胼胝・鶏眼処置③自宅で行うフットケアのセルフケア指導である。また、糖尿病合併症の進行の程度を把握するために、半年毎に足潰瘍発症リスクを評価する。 フットケア外来来院時には、毎回患者の足状態をデジタルカメラで撮影し、患者のフットケア行動評価を行う。なお、フットケア行動の評価は、以前に開発したセルフケア行動評価尺度J-SDSCAを用いる。また、爪白癬を有する患者の場合は、爪白癬臨床評価尺度SCIOを使用して評価する。 フットケア内容は、足状態、患者のフットケア行動の評価を踏まえて、経過を観察しながら検討していく。なお、看護師の介入内容や患者の行動変容を詳細に振り返ることができるように、療養指導場面をビデオ撮影する。看護師や患者の行動の分析には質的研究手法を用いた分析を行う。量的、質的双方からの分析を重ねていくことで、個々の患者に合ったフットケア内容を提示していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後休暇、育児休業により平成28年6月9日~平成29年3月31日において研究を中断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
1年間の補助事業延長が認められたため、平成29年度は、本研究で開発した神経障害評価指標が導入された足潰瘍発症リスク指標を用いて、実臨床におけるフットケア介入継続をし、量的・質的の両面から糖尿病患者の足状態、フットケア行動などについて分析していく予定である。
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