本研究の目的は院内心停止の第一発見者となりうる看護師の視診・触診技術を測定し,可視化すること、看護師の院内心停止の判断力を向上させる教育方法の開発をすることである。 2017年度は看護師の経験年数に応じ,対象者を2群に分け,研究協力の得られた24名を対象に,視診・触診技術の測定を実施した.測定に際し,ウエラブル触動作センサーおよび視線計測機器を装着してもらい,急変時を想定した模擬患者への初期対応場面を計測した.看護師の行動が死線を動かさずに触診を実施することも多いことが前年度に明らかになったため,実施時場面をアクションカメラおよびVTR撮影を同時に行うことで,被験者の行動が分析できるように撮影角度を増設した.模擬患者には死線期呼吸を演じてもらい,同一のシナリオ下で看護師の行動を分析することとした. 経験年数が多い看護師群は,呼吸が異常であることと同時に,意識レベルを瞬時に判断するために,患者の顔および表情,胸郭の動きを意図的に観察しているのに対し,経験年数の少ない看護師群は,呼吸が異常であると判断するために,聴診器を使用する動作,モニター観察行う動作に時間をかけていることが多く,異常であると察知しても,脈拍の蝕知など循環のサインを確認していないことが多く,行動に違いがあることがわかった.触診に関しては,経験が少ない看護師は,患者に触れる行動そのものが少ない.また,経験年数が多い看護師は,循環のサインをとらえるために,かならずしも脈拍を蝕知するわけではなく,手足の冷汗の有無,チアノーゼ症状など,視覚的な情報から,判断していることもあった.測定後のヒアリング調査では,経験の少ない看護師は,心電図モニター判読を重要視していることが多く,モニター心電図が装着されていない状況は,戸惑うことがある.
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