研究課題/領域番号 |
15K11651
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
上田 伊佐子 徳島文理大学, 保健福祉学部, 准教授 (90735515)
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研究分担者 |
雄西 智恵美 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (00134354)
太田 浩子 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (90321207)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がんサバイバー / 心理的適応 / 尺度開発 / 女性性 |
研究実績の概要 |
女性がんサバイバーは病気の成りゆきへの不確かさに加え,生殖に絡む問題や女性性の喪失などの問題を有すること,またがん罹患のピークが女性のホルモンの変動,家庭的・社会的役割変化のストレスの時期と重なることから,うつや適応障害などの精神障害の有病率が高いといわれている.このような女性がんサバイバーの主体的な生き方を支えていくための看護介入が促進されていくためには,その介入の成果を測定できる用具の開発が必須である。しかし,現存の多次元的な機能を測定するHRQL尺度や,精神医学的診断指標である不安・抑うつ尺度では測りきれないものがある.そこで本研究は女性がんサバイバーの心理的適応尺度の開発を目的とする。 H27年度は,女性がんサバイバーの心理的適応の特性を探索するための予備的な調査として,研究者らが開発した「がんサバイバーの心理的適応尺度」を使用して,性別や疾患,身体的症状,サポート状況などが女性がんサバイバーの心理的適応にどのように影響するのかについて調査し,分析した。その結果,男女のコーピングや心理的適応には共通点と相違点があること,また性別や疾患別に使用するコーピング方略の特徴を数的に明らかにした。その結果を国内外の学会で公表し,がん看護の研究者と情報交換を行った。 同時に,女性がんサバイバーの「女性性」について,研究協力者間での文献検討会を月2回のペースで継続的に行なった。その結果,女性がんサバイバーが自己の「女性性」をどのように認知するか(認知的評価)には個人差が大きく,この部分がコーピングとその結果としての心理的適応に影響を与えることから,「女性性」の認知的評価の測定に着目することが重要であるとの見解を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H27年度の当初予定は、乳がんと女性生殖器がん患者を対象にしたインタビューによる質的研究により,女性がんサバイバーの心理的適応尺度原案を作成することであった。しかし,インタビューでの研究を実施するにあたり,その予備的な調査として,女性であることや疾患による違い,身体的症状やサポート状況などがどのように心理的適応に影響を与えているのかについて把握する必要があると考え,まずは研究者らが開発した「がんサバイバーの心理的適応尺度」を使用して,心理的適応とそれに影響を与える要因との関係について調査し,解析することから研究を開始した。このことが予定よりもやや遅れている理由である。そして,結果を国内外の学会で公表することで,がん看護専門看護師やがん看護研究者のエキスパートとの情報交換を行い示唆も得られた。今後の研究に向けての基盤になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究経過の中で,女性がんサバイバーの心理的適応に関連する要因のいくつか見えてきたため,これをもとに,H28年度は,インタビューによる質的研究により,「女性性」の認知的評価の視点を明らかにしたうえで,女性がんサバイバーの心理的適応の特性が反映された尺度開発を継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は研究の進捗状況から研究協力者への謝金が不要であったこと、購入予定であった統計解析ツールが所属大学内で無償でライセンスが得られたことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は研究協力者への謝金が発生する。また質的データを統計処理できる解析ツールを購入する必要が生じたたため、その購入に補填する予定である。
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