今年度は、昨年度までの研究結果を踏まえて、再度、女子大学生35人(灸あり群17人、灸なし群18人)を対象に調査を実施した。データ収集は、①年齢や体重などの基本情報、②「冷え症」調査用問診票への記載、月経前後に③修正MDQ質問紙と④月経痛(自作のカレンダーに記入)を依頼した。また、灸あり群には火を使わないお灸(セネファ社)を、三陰交に月経開始後5日目から次の月経開始後5日目まで1か月間、1週間に4日以上行ってもらった。昨年度までの研究との違いは、深部体温測定や自律神経活動を測定しない点、卵胞期の調査時期を月経終了後5~7日から、月経開始後3~7日にした点、灸なし群にも月経周期2回分のデータ収集をした点である。 その結果、①修正MDQ総得点と月経痛との間には正の有意な相関がみられた。修正MDQの下位項目では、黄体期は「自律神経失調」「水分貯留」「PMS」、卵胞期では「痛み」「集中力」「自律神経失調」「否定的感情」「PMS」の項目に月経痛と正の相関がみられた。②灸実施前後で修正MDQ得点と月経痛を比較した結果、黄体期、卵胞期ともに修正MDQ総得点、月経痛が有意に下降した。修正MDQの下位項目では、黄体期の「集中力」「行動変化」「否定的感情」「PMS」、卵胞期は、「痛み」「集中力」「行動変化」「自律神経失調」「水分貯留」「否定的感情」「PMS」の得点(9項目中7項目)が有意に下降した。 冷え症群と非冷え症群間の修正MDQ得点の比較では、黄体期、卵胞期ともに総得点に差はなかったが、下位項目では、「自律神経失調」得点が黄体期・卵胞期ともに冷え症群が有意に高く、卵胞期の「痛み」「集中力」の得点も冷え症群が有意に高かった。月経痛は、冷え症群、非冷え症群間で有意差はなかった。 以上のことから、女子大学生がセルフケアとして行う三陰交への灸刺激は月経痛、月経随伴症状を改善する効果があると考えられた。
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