研究課題/領域番号 |
15K11659
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
河野 史 佐賀大学, 医学部, 教授 (10152985)
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研究分担者 |
鈴木 智恵子 佐賀大学, 医学部, 教授 (20569636)
柿原 奈保子 佐賀大学, 医学部, 助教 (50588762)
中河 亜希 佐賀大学, 医学部, 助教 (70453222)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 母子分離 / 代理母 / 脳の形成 |
研究実績の概要 |
乳幼児期に虐待を受けると脳の構造や機能の形成・成熟に影響を受け,生涯持続する精神疾患を生じるリスクが高いが,保母や養母が関わることによりこれら危険因子を回避できる可能性が高い.動物実験においては母子分離が危険因子の一つとされ,母子分離により成長後の脳内化学物質の含有量が種々の脳部位で変化し,またストレスからの回復も悪いと報告されている.しかし保母や養母と想定しうる代理母を用いた研究はない.そこで本研究では,①-④の代理母ラットを仕立て,1)脳の正常な成長に効果的な代理母のタイプ,2)ストレスからの回復に効果的な代理母のタイプ,3)脳の成長にキーとなる接触時期を明らかにし,子にとって理想的な代理母像を考察することである.代理母ラットおよびコントロールの種類は次の通り.①母子分離中のみ,過去に子育てを数回経験したラットと同居(分離時以外は実母に戻る),②母子分離中のみ,未経産ラットと同居(分離時以外は実母に戻る),③出生後から離乳まで,本来の母とは別の授乳可能なラットと同居,④出生後から離乳まで,人工哺乳装置のもとで未経産ラットと同居,⑤出生後から離乳まで実母と同居させ,母子分離なし(ネガティヴ・コントロール),⑥母子分離中の同居なし(ポジティヴ・コントロール)(分離時以外は実母に戻る) 27年度は本研究の基礎となる,成長後のストレス負荷(拘束ストレス)が脳に与える影響についての観察に留まった.出生後から離乳まで実母と同居させ,母子分離のないネガティヴ・コントロール(代理母⑤)49日齢のラットにストレスを与え,免疫組織化学染色により同定しうるACTH,CRF,オキシトシンの脳内分布をストレスを負荷しないグループと比較した.使用した抗体の特異性の検証などのため,まだ十分な比較は出来ていないが,テクニカル面での支障は解決している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
使用する抗体の特異性の検証と,母子分離モデルを作成するためのスケジュール調整(実験補助者の確保を含む)が困難であったため,当初の研究計画からやや遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
上記11.の理由で述べた事項については解決の目処が付いたため,28年度の研究遂行に関しては問題ないと考える.ただし,人工哺乳装置の作成に難航しているため,当初計画した代理母④については保留とし,人工哺乳装置の作成に関しては試作を継続する. したがって,28年度は代理母(①②③)による哺育,およびコントロール(母子分離しない哺育⑤および母子分離⑥)ラットを作成する.各育成ラット(①②③⑤⑥)は6週齢時に拘束ストレスを負荷した群としない群に分け,脳標本摘出に供する.脳標本はオキシトシン,コルチコトロピン放出ホルモン(CRH),神経成長因子(NGF)をはじめとする各種化学物質により染色し,脳の形成・成熟についての観察を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
母子分離モデルを作成するための実験補助者の確保がうまく行かず,当初の研究計画から全体的なスケジュールにやや遅れが生じたため,予算執行も当初の予定から変更が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は順調に実験補助員の確保ができているため,研究は滞りなく遂行できるものと予想され,それに伴う物品や人件費も執行されるものと考える.
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