研究課題/領域番号 |
15K11660
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
上田 公代 熊本大学, その他の研究科, 教授 (20145345)
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研究分担者 |
魏 長年 熊本大学, その他の研究科, 准教授 (00363523)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低出生体重児 / 正常体重児 / 生活習慣病 / 1歳6ヶ月児健診 / 3歳児健診 / 追跡調査 |
研究実績の概要 |
目的:低出生体重児の胎児期から幼児期の身体的発育と母親のライフスタイルおよび養育との関連を明らかにし、胎児期、乳幼児からの生活習慣病予防を提案することである。 対象:低出生体重児(2500g未満)及び正常体重児とそれぞれの保護者とした。調査は、健診率が高い(1歳6ヶ月児―94% 全国2010、3歳児-91.3% 全国2010)ため、地域の対象者の代表値(偏りが少ないこと)を得やすく、継続的な健診が高いことから、暗号化・無記名による追跡調査を計画した。 H27年度(初年度)の計画:1)質問紙調査(案)を調査対象者にフォーカスインタビューと1歳6ヶ月児の血圧測定を試験的に行い、1歳6ヶ月児と3歳児の最終的な質問紙を作成する。2)調査対象の施設と熊本大学の研究倫理委員会の承認後、1歳6ヶ月児(低出生体重児群100名、正常体重児群100名)の調査であった。 結果:質問紙(案)をもとに、1歳6ヶ月児又は3歳児の育児中の母親3名及び市町村のスタッフ3名に、それぞれインタビューを行った。その結果、最近の児の食生活習慣に危惧する点が多いとの意見から、質問紙には、親子のライフスタイルの中でも、特に親の食事への方針、児の食生活に関する質問項目をさらに追加した。1歳6か月児の血圧測定はカフを巻くだけで泣く、または、カフを装着するとすぐ外す(マジックテープを容易にはがす)などかなり困難であった。相談の結果、全員に実施するのは困難であり、20名程度の協力者に依頼し,自宅で落ち着いている頃に測定するのは可能との理解を頂いた。H28年3月に予定していた今年度の1歳6ヶ月児健診の調査は、実施ができず、H28年5月に延期となっていた。しかし、4月14の熊本震災により5月も計画できなくなり、今後の見通しもたっていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況は、調査票は完成できたが、追跡の第1回の1歳6ヶ月の調査が計画どおり実施できなかった、また、2回目の3歳児の調査が研究期間内に実施できない可能性が高く遅れることになる、。理由は、1)最も大きなのはH28年4月14日(熊本震災)である。1歳6ヶ月~3歳児の追跡調査には、遅くても1歳6ヶ月児健診の第1回目の調査は、H27年度(H28年3月~5月)の実施を計画していた。 2)つぎに、この実施時期にあわせて、我々が作成した調査票案を見直し、修正した(案---我々が開発した自然環境を取り入れた「子育て保護者のQOL」質問紙と、児の発育・発達は厚労省の「21世紀出生児縦断調査票」の児の遊びと生活を参考に作成していた)。この案を、調査対象者と健診を実施する保健センターの保健師と栄養士に、再度、インタビューした結果、親子のライフスタイルの中でも、食習慣に変化が多くみられ、将来の発育・発達に影響することが危惧されるため、親子の食習慣に関する質問項目も増やした。その結果、調査開始もより早期に着手できなかった。 3)さらに、健診時における血圧測定に関して、健診に要する時間(少人数を対象に緻密に対応されている)も長く、スタッフ(小児科医師も含む)の血圧測定に対して保護者の負担を心配された。また、臨床場面での測定とは異なり、健診時の子どもが違和感のあるもの(血圧測定のカフを巻く)に対する警戒心は思ったより強かった(体重測定、身長測定もスタッフ、親、補助者の3人がかりで実施)。3歳児は説明を理解でき,協力できる。そこで、少人数の協力者に、子どもが血圧測定になれるまで待って、場所、時間を考慮して依頼することは可能となった経緯からより早期に調査の着手ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の期間中の調査(28年~29年度)に、予定した1歳6ヶ月から3歳児の追跡調査は可能かを危惧している。 理由として、予定していた調査施設(熊本市エリア-車で30分の範囲)は、甚大な被害を受けており、健診を実施する場の建物(保健センター、役場、公民館、小学校など)の亀裂などにより、立ち入り禁止状況や余震の多さから避難者対応も長引くとのことで、通常の健診業務もできないとの回答(9月まで不可能とのこと)である。そのため、予定していたH28年5月の1歳6ヶ月健診児の調査は実施できず、現在段階では、震災後の避難者への対応が優先であり、研究に関して相談はできず、今後の計画はできていない。今後、熊本県内外で協力を得られる施設を検討していく。研究期間中に追跡ができない場合には、ケースコントロール調査の結果によって傾向を把握することも考えている。
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