研究課題
乳腺炎の発症は、母乳育児を困難にする。発症危険因子として経験的に食事があげられているが、科学的根拠は全く解明されていない。このため、統一したガイドラインが存在せず、母親たちを混乱させている。そこで、本研究課題では、乳腺炎発症と食事成分との関係を実験的に解明し、更に炎症を抑制する食事成分の検証を行うことを目的とした。スクロース食を摂食し、且つ離乳すると乳腺に炎症を生じる。一般的に高スクロース食を摂食すると肝臓に炎症を生じる。肝臓の炎症が乳腺に影響を及ぼす可能性を検討するため、今年度は妊娠・授乳・離乳過程を除いた単純な系によって検証した。その結果、マルトース摂食マウスでは、予測通り肝臓・乳腺共に炎症は確認できなかった。また、スクロース食摂食マウスにおいては、肝臓で炎症が確認できたが乳腺では確認できなかった。肝臓は食事成分のみで炎症が惹起されるが、乳腺は食事成分に加えて授乳・離乳のステップが必要であることが再確認された。また、肝臓の炎症が乳腺に影響を及ぼしている可能性は低いことが考えられた。更に、フルクトースの利用に関して、肝臓ではChREBPβとGLUT5が有意に発現上昇し、乳腺でも上昇傾向が認められた。本試験では妊娠前のマウスを用いており、乳腺におけるフルクトースの利用に関して、授乳前後では異なる可能性が考えられた。一方で、高脂質・高スクロース食摂食の影響を授乳・離乳ステップを経たマウスで検証した。その結果、離乳1日後に急激に好中球数が増加し、NF-κBp65のリン酸化の有意な上昇も認められ、強い炎症を生じたが、マルトース食群では認められなかった。高スクロース食よりも強い炎症が惹起されることが示唆された。乳腺炎を抑制する食事成分の検証はin vitro試験でローズマリー抽出物等を見いだしたがin vivo試験では検証できなかった。
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薬理と治療
巻: 45 ページ: 1831-1842