研究課題/領域番号 |
15K11663
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
久松 美佐子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (10512600)
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研究分担者 |
堤 由美子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30207419)
新地 洋之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (60284874)
荒井 春生 天使大学, 看護栄養学部, 教授 (60406246)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精神看護学 / 家族看護学 / 悲嘆 / がん |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、終末期がん患者の配偶者を対象に、前方視的にタイムリーに同一対象の予期悲嘆から悲嘆までの過程における心理反応の変化を調査することによって、予期悲嘆から悲嘆までの悲嘆プロセスの全様および、予期悲嘆や悲嘆に影響する要因を明らかにすることである。 平成27年度の計画は、配偶者が余命の説明を受けた後の予期悲嘆時期から死別後1年までの悲嘆時期の面接調査を行い、面接後の個別分析を行うことであった。現在までに、10名の研究参加者の協力を得て、2ヶ月~6ヶ月毎に面接調査を実施している。現在、予期悲嘆時の心理の個別分析・全体分析を進めている。その結果、余命の説明を受けても、患者の生きることを支えることに尽力し自分の予期悲嘆は抑え込みする傾向にあることが明らかとなった。これは、現代の延命のための化学療法により、患者の余命が延び不確実になっていること、伴侶を失うことへの恐れから死別を考えまいとする配偶者特有の心理が影響していることが明らかとなってきた。 このような、配偶者の予期悲嘆時の心理を理解し、医療者に求められることを検討することは、患者やその配偶者にとって良い最期を迎える支援の方法を見出し、配偶者の心残りの軽減につながると考える。そして今後、悲嘆時の心理の変化を追跡調査することによって、予期悲嘆の抑え込みの状況が実際の死別を体験した後の悲嘆にどのように影響するのかを明らかにすることは、効果的な介入方法を見出し遷延性悲嘆の予防の一助になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画は、配偶者が余命の説明を受けた後の予期悲嘆時期から死別後1年までの悲嘆時期の面接調査を行い、面接後の個別分析を行うことである。現在までに、12名の研究参加者の協力を得て、2ヶ月~6ヶ月毎に面接調査を実施した。12名のうち2名は、体調不良等の理由により途中離脱があった。死別前の予期悲嘆時の面接は、一人1~4回(平均2回)実施した。10名のうち6名は死別後悲嘆の時期であり、0~3回の面接を実施している。現在までの面接の延べ回数は25回である。 また、面接が終わるごとに逐語録を作成し、個別分析を進めている。個別分析は、1 人の面接が終わるごとに逐語録を作成している。作成した逐語録から、データを切片化し、できるだけ多くのプロパティ、ディメンションを抽出し、それらを基にラベル名をつけ、ラベル同士を見比べてグループに分けカテゴリを抽出している。そして、各カテゴリのプロパティとディメンションを基にカテゴリ同士を関連づけ、個人の悲嘆プロセスを表すカテゴリ関連図を作成している。現在25回の面接のうち、15回の分析を終了している。 これらの分析の過程で、専門的知識提供およびカテゴリ開発の妥当性を高めるために、研究分担者に検討データを提出し理論的に妥当性を欠くものでないか検討を重ねている為、分析に時間を要している。また、これらの分析を重ねながら、理論的サンプリングをし、調査協力機関に対象者の選出を依頼している為、対象者の選出に時間を必要としている。しかし、対象者数は、途中離脱者の可能性を含み15名としており、現在10名の研究参加者を得ているので、当年度の計画の範囲で進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、予期悲嘆時期および悲嘆時期の面接調査死別後1 年後までの調査を継続する。理論的飽和を目指すため、あと数名の対象者が必要と考える。引き続き調査協力機関に対象者を依頼し、面接を実施していく。また、現在調査中の研究協力者との関係を作りつつ、死別後1年までの面接の協力を得られるようにする。 予期悲嘆時期のデータ分析と同様に、面接終了ごとに個別分析を行う。その後、悲嘆プロセスの構造を把握し、全体分析を行い、カテゴリ間の関係をカテゴリ関連図を使って検討し、理論の構築を図る。 研究学会および研究会に参加し知識を深めると共に、分析が終わった項目について学会において研究成果の発表を行う。その後、研究会発表時の示唆を基に、論文にまとめ投稿する。前年度は、調査・分析中であり、成果の発表までは至らなかった為、本年度は前年度の調査結果をまとめて成果の発表の為に、前年度の繰越金を使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は、調査・分析中であり、成果の発表までは至らなかった為、発表にかかる費用を使用しなかったため。また、調査にかかる費用を当てていたが、研究協力者との面談場所が遠方ではなかったため、調査にかかる旅費を使用しなかったため。分析補助者として人件費をとっていたが、研究分担者の協力を得て分析を進めることができたので、雇用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度は、調査・分析中であり、成果の発表までは至らなかった為、本年度は前年度の調査結果をまとめて成果の発表の為に、前年度の繰越金を使用する予定である。
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