最終年度である平成30年度には,前年度までに計測した妊婦の姿勢や歩行,起立・歩行動作における解析結果と,実際に生じた腰痛等の症状をもとに,各妊娠週数での筋骨格系の変化の状況を踏まえた転倒予防および障害予防・改善のための指導プログラムを考案し,実際に妊婦を対象として指導を行った.具体的には,姿勢のセルフチェック方法,骨盤底筋や腹横筋のトレーニング方法,歩行や起立動作における姿勢制御等の指導が中心であった.指導を実施した妊婦では,姿勢や動作において個別的介入を行ったことにより,姿勢不安定性や腰痛や尿失禁等の妊娠週数の進行に伴うトラブルの訴えはほとんどなく経過した. またこれらの研究成果をもとにして,産婦人科クリニック等において,産前産後の女性を対象としたケア教室の開催に至った.ケア教室では,集団を対象とした指導と,個別的指導を実施した.集団教室では産前産後女性に共通して生じる身体的変化やセルフケアについて講義とエクササイズを取り入れて指導し,個別教室では実際に生じている変化や症状に応じた指導を行った. 研究期間全体を通して,妊娠中の姿勢や動作様式の変化における分析とそれに対する個別性を重視した転倒予防プログラムの開発および実施に至ることができ,本研究の主たる目的を達成できた.本研究の成果により,妊婦の身体的変化を多角的視点から分析し,個別的ケアを行うことの重要性が示されたことは,女性の健康支援において非常に意義深いと考える.
|