更年期女性における日常生活と酸化ストレス状態との関連を究明することを目的に、平成29年度に引き続きリクルートを行い、42名からデータを得た。研究参加者は継続的な治療を受けていない、且つ喫煙をしていない女性であり、平均年齢は51.0±6.0歳であった。 酸化ストレス状態として血清を用いて、d-ROMs値;酸化ストレス度、BAP値;抗酸化力、BAP/d-ROMs;潜在的抗酸化能を測定した。d-ROMs値は336.5±45.7U.CARR、BAP値は2227.8±191.9μmol/L、BAP/d-ROMsは6.76±1.21であり、酸化ストレス度はやや高く、抗酸化力はほぼ正常な状態、潜在的抗酸化能はやや低い状態であった。次にこれらに酸化ストレス状態と血中エストロゲン濃度、脂質代謝等、食物摂取による抗酸化物に加え、研究参加者の主観から尺度化する簡易更年期指数(SMI)および健康関連QOLの関連について検証したところ、血管機能関連マーカー(高感度C反応性蛋白)と潜在的抗酸化能との間に負の相関が見られた(rs=-0.331)。酸化ストレス状態と血管機能関連マーカーに関連が見られたことから、閉経後の女性における血管機能低下や動脈硬化の発症に、酸化ストレスが関連していることが考えられた。ヒアリングにより得られた月経状況によって分類したところ、「閉経前」22名、「閉経後」20名であった。閉経前後で酸化ストレス状態に有意差は見られなかった。 加齢は酸化ストレスを増加させることは明らかになっており、更年期の酸化ストレス増加を抑制することは、高齢者の健康増進、疾病の予防の観点から重要である。今後本報告に記す生体指標および更年期症状の結果と併せ、酸化ストレスを亢進させる要因を同定するため多変量解析による分析を進める。
|